トランティニャン

今朝の秋のトランティニャンのレビュー・感想・評価

今朝の秋(1987年製作のドラマ)
4.0
昭和の映画を観ているような、ゆったりと情感あふれるリズム、笠智衆が主演だからか、あの丸い背中を見ているだけでだだ漏れる小津エッセンス。蓼科の風景とともに流れる武満徹のスコアが、まるで往年の西部劇を観ているかのような風合いだった。
されど描かれるのは家族の崩壊について。父と息子は長年会っていないし、母は昔不倫して家を出て行った。息子の妻もまた不倫して、病に侵された自分から去ろうとしている。「何も無い」と嘆く、死を目前にした息子のために、バラバラになった家族が再び家族であろうとする。「錯覚」というか、これが家族そのもの。山田太一ドラマは初めて観たが、これほど味わい深いものとは……