トランティニャン

ハウス・オブ・ザ・ドラゴンのトランティニャンのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(2022年製作のドラマ)
5.0
始まるまでは、キャスティングに魅力を感じていなかったりして腰が重かったが、いざ観始めたら再びウェスタロスに引き戻されどっぷり浸かってしまった。『ブレイキング・バッド』に対しての『ベター・コール・ソウル』と同様、『ゲーム・オブ・スローンズ』より洗練された映像美に魅了される。 

『GOT』が鉄の玉座を巡り各地の諸侯が群雄割拠する戦乱絵巻であり、そんな彼らが人類共通の脅威である「冬の王」に闘うために結束する物語であったのに対し、約200年前を舞台にした『HOTD』は、ターガリエン家による鉄の玉座の継承=サクセッションをテーマにした重苦しい政治劇、そしてドラゴンによる内乱(双竜の舞踏)である。『HOTD』はキングスランディングとドラゴンストーンで長い時間をかけ対立と関係性が継承されていく。相関図ではなく、家系図が複雑であり、同じマナーで描かれながらも、カタルシスもスペクタクルも趣向が異なっているのが素晴らしい。

物語の主人公は、王女レイニラと、図らずも王妃となったアリセントの幼馴染だ。二人は長い時間をかけ対立を深めながらも、ヴィセ―リス王の思いも汲み、理性的に振舞おうとする。しかしながら、二人の周囲(男)は思惑とは相反する動きをするし、二人の内面にある欲望や野心が子に継承され、制御不能なままに悲劇が起こる。なぜ人と人は不和になるのか、子の存在は親に何をもたらすのか、王家の宮廷政治劇でありながら、誰の身にも降りかかる普遍性が本作にはある。