なっこ

桶狭間〜織田信長 覇王の誕生〜のなっこのレビュー・感想・評価

3.0
“遠い明日を夢見る”

良い言葉だな。
コロナ禍の今も必要な考えだと思う。とりあえずの今を打ち破るために戦うだけでは何も残らない、この身体が滅びるこの時だけでなくもっと遠い未来を夢見る力がないと歴史に名を残すようなことはきっと成し遂げられない。
人ひとりの生きる時間なんてたかが知れてる。もっと長い時間について知っておかなくては歴史の節目に良い未来を選ぶことはできない。
彼の演じる信長は激しさがうちに秘められていてとても良かった。若さがもう遠くにあることを感じられて少し淋しくなるくらいに。

個人的にはすずちゃん演じる濃姫とのシーンが好きだったな。潑剌とした若さのある濃姫と彼女の前では寛いだ雰囲気で柔らかくなる信長がとても良かった。意外な取り合わせにも思えたけれどとてもお似合いだった。

明日をも知れぬ命を生きる戦国時代だからこそ変化を恐れず積極的に生きる、そういう信長像。既存の価値観を打ち砕いて進むようなやり方は仕える側も怖かったに違いない。彼と同じように遠い明日を夢見ることが出来た人がどれほどいたのだろうか。自らものびのびやっていたからか、臣下には焚き付けるような言葉かけはするが行動は自ら考えさせ自由にさせているように見えた。敵も味方も誰がどう動いたか、その気持ちを汲む能力に長けている印象。どれ程予測を立てて根回しをしていてもその場その場で誰がどんな判断を下すかなんてその時まで分からない。起きたことをどう処理して次に進むか、結果を良い方へと引き付ける力が強いかどうか、そんな力が要る時代。それが天命や運と呼ばれるのかもしれないけれど。
許されるなら私もどんな理由で自分が死へと向かうのか予め知ってから逝きたいタイプ。だから滅びの美学ではなく、炎の中舞って死にゆく信長像はいつも羨ましく思いながら見てる。後世の人のイメージが作らせた最期なのだとしても誰が演ってもこの場面は必ず残していってほしいな。

今のことに集中するのも大事だけど遠い明日成されることのために今を生きることもとても大事だと思う。未来のためになることも意識して生きたい。
なっこ

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