こたつむり

岸辺露伴は動かないのこたつむりのレビュー・感想・評価

岸辺露伴は動かない(2020年製作のドラマ)
4.5
オリジナル要素を多めに含みながらも荒木飛呂彦先生の原作を破綻させず、寧ろ“奇妙さ”や“怪奇風味”増し増し。「原作付きドラマはこうして調理しろ」と後世に名を遺すレベルでした。

これは小林靖子さんの脚本のお陰。
『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメで携わっているからか、何を削って何を足せば良いのか、完全に熟知されているのでしょう。それが顕著なのが第4話から第6話の展開。

原作のエピソードを如何に膨らませるか。
これはかなりの難題です。陳腐な仕上がりになるのが大概の話。さすがの小林靖子さんでも難しいと思うのですが…その答えは『ジョジョ』本編からの逆輸入。

これはまさに挑戦。まさに冒険。
一歩間違えれば作品世界を壊すことに繋がる行為。しかし『ゲゲゲの鬼太郎』アニメ版第二期のように違和感なく継ぎ目をレタッチ。見事なアレンジでした。

そして、その脚本を見事に活かした出演陣。
まず、高橋一生さんの岸辺露伴っぷりは脱帽の極みですね。ぶっちゃけた話、最初は違和感が先立ちましたが(世間的に好評ならば尚更のこと)そんな偏見を吹き飛ばすほどの熱演でした。

更に彼を活かしたのは飯豊まりえさん。
突飛な物語である本作を分かりやすく噛み砕くとともに、ウザいのに愛されるというキャラクターを確立。原作には殆ど関わらない存在なのに、それを感じさせないのは脚本の意向を完全に汲み取っているからでしょう。マジで感服です。

あと、製作スタッフのジョジョ愛も最高。
例えば、缶コーヒーがジョージアじゃなくてジョジョジアだったり、少女の洋服が広瀬康穂風の薔薇アレンジだったり。サイコロの場面だけじゃあなく、色々なところで愛情が迸っていました。

ちなみにDVDの特典に小林靖子さんのインタビューが収録されていますが、あれも必見ですね。ドラマを作るために何が必要か、を言語化されています。勉強になるなあ。

だから、面白いのも当然なんですね。
「物語に必要なのはリアリティ」とは露伴先生のセリフですが、要は“物事の急所”を捉えているか。本作に限ってはギュッと掴みまくって揉みまくっていますので“原作を読んでいても”新鮮な気持ちで楽しめるのです。

まあ、そんなわけで。
令和の世に馴染む奇妙な物語集。ジョジョ風味を楽しむも良し。役者さんたちを楽しむも良し。視聴者の想像力次第でムクムクと楽しくなる傑作なので、偏見を捨てて是非に。
こたつむり

こたつむり