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天国と地獄~サイコな2人~のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

天国と地獄~サイコな2人~(2021年製作のドラマ)
4.7
本作で綾瀬はるかが演じるのは、警視庁捜査一課の刑事・ 望月彩子(もちづき・あやこ)。これまでさまざまな役を演じてきた綾瀬が今回、初となる刑事役に挑戦、ま たTBS日曜劇場での主演も本作が初となる。
彩子は、努力家で正義感が強く、気が強く、それに加えて上昇志向も強い、慌てん坊な35歳。物事を「〜 すべき」「〜であるべき」と考える“べき論"タイプ。故に、その物言いや性格は上司や周囲の人たちには煙たがられている。とにかく融通が利かず一直線で、頑張りすぎて失敗も多い存在。
自分を馬鹿にする周囲に一矢報いるためには、大手柄をあげ、目にものを見せるしかない! 「必ず、絶対、 100%、手柄立ててやる」そう意気込んでいたある日、独自の捜査でかき集めた証拠を手にある殺人事件の容疑者となる男を、自らの手で逮捕する大チャンスが到来!
しかし、そんな矢先に彩子は・・・なんと不運にもその男と魂が入れ替わってしまう──。
そんな彩子と幸運にも魂が入れ替わるサイコパスな殺人鬼・日高陽斗(ひだか・はると)を演じるのは高橋一生。『凪のお暇』(2019年)以来のTBSドラマ出演、そして本作が日曜劇場初出演となる。
高橋が演じる日高は、表向きは化学畑の研究者であり、若くしてベンチャーを立ち上げた、やり手の経営者。頭の良い人間にありがちな「上から目線」などまったくない超スマートな好人物だ。
しかしそんな日高の本当の姿は、その類いまれなる頭脳と知識を駆使したサイコパスな殺人鬼──。「善と悪」そして「女と男」。ま ったく正反対の2人が入れ替わった姿を、綾瀬と高橋がどのように演じるのか、注目していただきたい。
そして、彩子の家に居候中の、のんびり屋なフリーター・渡辺陸(わたなべ・りく)を演じるのは、『天皇の料理番』(2015年)以来の日曜劇場出演となる柄本佑。
陸は家賃、光熱費、食費などは一切払わず、 家事だけを担当する、彩子の完全なヒモ状態の男。それでも普段から敵の多い彩子にとっては、唯一の心の拠り所にもなっている。
彩子の生活の一番近くにいるものの、自然体すぎて正直まったく頼りにはできない 存在の彼だが、果たして、中身が男性になってしまった彩子の変化に気づくことができるのか、それとも──。
さらに、彩子の先輩であり天敵とも言える刑事・河原三雄(かわはら・みつお)を演じるのは、『ATARU』(2012年)以来の日曜劇場出演となる北村一輝。河原は刑事としての能力は高く、結果も出すが、 そのためのやり方は何でもありという危険な匂いの漂う人物。
しかしその裏では上の人間の弱みを握っているとも、便宜を図っているとも囁かれており、正義感の強い彩子はそのやり口を認めることができない。彩子にとってはまさに目の敵だ。
そんな河原は、日高と入れ替わり、外見が殺人事件の容疑者となってしまった彩子を、その独特な嗅覚で幾度となく追い詰めていく──。
知っていますか? 本当は月は太陽に、太陽は月になるはずだったんですよ。
でも、シヤカナローの花を盗んだから──。月は太陽に、太陽は月になった。
運命が入れ替わってしまったんですよ。
鹿児島の奄美大島に伝わる「月と太陽の伝説」かのごとく、「刑事と殺人鬼」という相反する2人の魂が入 れ替わることを皮切りに、「善と悪」「女と男」が複雑に交錯する物語はエキサイティングな展開へ──。
今日からは、あなたは殺人事件の容疑者、私は刑事ですから──
様々な傑作ドラマを作ってきた脚本家森下佳子が、「義母と娘のブルース」に続いて綾瀬はるかと組んだのは、初の刑事ドラマ。
奄美大島に伝わる「月と太陽の伝説」になぞらえて、真っ直ぐな刑事望月彩子と連続殺人事件の容疑者日高陽斗が、日食の晩に入れ替わってしまう。
中身が望月彩子で外見が日高陽斗と日高陽斗を、中身が日高陽斗の望月彩子と望月彩子を見事に演じ分ける綾瀬はるかと高橋一生の演技合戦、彩子と日高が時に裏をかこうとしたり協力し合いながら連続殺人事件の真相に近づこうと彩子の天敵の河原刑事としのぎを削る駆け引きと入れ替わりによる立場や善悪の転調と殺人事件の謎解きが最後までスリリングで、ユニークな刑事ドラマとして楽しめる。
幸福も不幸も善悪も、紙一重で入れ替わってしまう。誰もが、いないことにされる存在にならないように支え合い、苦しむ人の声を聞ける彩子や河原のような真実を追い求める強さと優しさが持ちたいと思ったラストだった。
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