ケイスケ

ハケンアニメ!のケイスケのレビュー・感想・評価

ハケンアニメ!(2022年製作の映画)
3.8
なんか…ほんとゴメン。もう「まーたこの会社クソアニメ作りやがって」とか絶対に言わない😞

公務員からこの業界に転身した斎藤瞳は、初監督作で憧れの監督・王子千晴と火花を散らすことになる。一方、かつて天才として名声を得るもその後ヒット作を出せず、後がない千晴はプロデューサーの有科香屋子と組み、8年ぶりの監督復帰に燃えていた。瞳はクセが強いプロデューサーの行城理や仲間たちと共に、アニメの頂点「ハケン(覇権)アニメ」を目指して奮闘する。

「面白くても売れないアニメがあれば、つまらなくても売れるアニメがあります」。この台詞が興行収入で苦戦している本作を体現していると思う。かなり面白かったのでもったいない。こういう「お仕事ムービー」として業界の裏側を見せる映画は定期的に作られて欲しいですね。リアリティがあったかはちょっとわかりませんが、雑誌編集部の裏側を描いた『騙し絵の牙』とかも良かった。

キャスト陣はみんないいんですが、個人的には柄本佑が演じたクセ物プロデューサーの行城が好きですね。新人の斎藤監督を様々な打ち合わせに連れ回していたのは、彼女が独立したときを想ってのことですし、熱量が低めに見えますが売れるために尽力を尽くしている姿はかっこいいです。ラストはキャラに似合わずガッツポーズをするかと思いきや、喜びを全身で体現していて笑った。

あと斎藤と王子が競う劇中アニメの『サウンドバック 奏の石』と『運命戦線リデルライト』のクオリティが凄い。普通にめちゃくちゃ面白そうだし、特にサウンドバックのシーンは詳細な話は明かされてないのに泣きそうになったもの。この劇中アニメの声優も一流揃いなので覇権争いの説得力があります。アニメに無知なスタンプラリーの人が泣くところがいいんだよなぁ…。まさに“誰かに刺さった”瞬間ですよね。

ただやはり邦画的な情緒感が長いところもあり、中盤に近所の少年、トワコの声優、スタッフとのいざこざといった問題をまとめて解決するもんだからちょっと退屈になってくる。まあその後は最終回に向けて一丸になり、一気に映画全体が駆け抜けていくため些細な問題ではありますが。あと王子監督が、最後まであんまり好きじゃないかな…。彼の苦悩も痛いほどわかりますが、一週間音信不通なんてもっとぶん殴られるべき。

全体的には非常に良くできた映画であり、印象に残る台詞やシーンも多いです。「どうせ客寄せパンダなら日本一の客寄せパンダになってやる!」…この台詞めっちゃ良くない?監督をはじめ、原画、音響、彩色などのスタッフ、プロデューサーに声優…アニメに携わってるいろんな仕事を知ることが出来たのはとても良かったです。『バクマン。』や『SHIROBAKO』とかが好きな人もきっとハマりますよ。良作でした!