keith中村

ヘルドッグスのkeith中村のレビュー・感想・評価

ヘルドッグス(2022年製作の映画)
5.0
 今までに観た原田監督作品の中ではかなり上位になりました。
 
 「黒澤と小津では?」「小津」
 「『アラビアのロレンス』と『ワイルドバンチ』では?」「ロレンス」
 
 シネフィル原田なんで、そんなセリフがあるけど、小津についてはDVDボックスまで登場。これは拳銃の隠し場所になってましたね。
 黒澤オマージュもありましたね。セリフの聴き取りづらさという(笑)。
 
 本作は潜入捜査官ものではありますが、このジャンルに特有の「バレるの? バレないの?」サスペンスは皆無。
 バレるトリガーになる出来事が中盤で起こるんだけれど、それが全然物語の牽引力にならない。
 まあ、そういう映画だなってことは、次第にわかってくるんだけれど、本作では結局それは最終的な「カップルの破局」のための材料にしかなっていなくって、そこに不満がある人もいだろうが、私は逆に潔いと思いました。
 
 それ以上に、潜入捜査官多すぎ! 「ゼイリブ」かよ!
 
 などと言いながら滅茶苦茶楽しめました。
 
 本作はてきぱきしてたね~。
 編集もめっちゃてきぱきしてるから、138分とは思えないくらい短く感じた。
 クロスカッティングが多用されるんだけど、そこも「てきぱき感」に貢献してる。
 俳優陣の演技もてきぱきてきぱき。
 そういうとこ好きだな~。
 
 序盤で、「1年後」って出るから、「あ、『坂口くんに接近しろ』の段取りは省略するんだ」と思ったけど、そこがエンディングで描かれるとは!
 この呼吸も「恋愛映画」のそれですよね。
 徹底的にそれをやったのが「ブルーバレンタイン」だけど、ええっと、これ何だっけ? この呼吸で「出逢った瞬間に時系列が戻って終わる恋愛映画」っていっぱいあるけど、全然思い出せないや。
 「ちょっと思い出しただけ」をちょっとだけ思い出したけど、あれも「ブルーバレンタイン」の変奏曲なんで、違うな。
 もっとストレートな時系列で描いて、最後の最後に「出逢い」に戻る映画あるじゃん!
 500日のサマーたんは似てるけど、最後サマーたんじゃなく、オータムたんだったしね。
 
 まあ、いいや!
 ともかく最終的にそんな風に思いを馳せるくらい、本作の着地は「恋愛映画」でしたね。
 でも、坂口君、ごめん! おれでもその二択、松岡ちゃん取るわ!
 
 とはいえ、恋に落ちる瞬間が、アドレナリンが出まくる「熱病」に罹患した瞬間だと仮定するなら、本作の最後のストップモーションは、「ストップモーションで終わる映画」嫌いな私でも、ちょっと泣きましたよ。
 
 ちなみにストップモーション・エンディングが大嫌いな私でも好きな「ストップモーションで終わる映画」は、洋画なら「明日に向って撃て」、邦画なら「Wの悲劇」。
 今日、邦画部門でちょっとそれが更新されたのも心地よかったな~!