今までに観た原田監督作品の中ではかなり上位になりました。
「黒澤と小津では?」「小津」
「『アラビアのロレンス』と『ワイルドバンチ』では?」「ロレンス」
シネフィル原田なんで、そんなセリフがあるけど、小津についてはDVDボックスまで登場。これは拳銃の隠し場所になってましたね。
黒澤オマージュもありましたね。セリフの聴き取りづらさという(笑)。
本作は潜入捜査官ものではありますが、このジャンルに特有の「バレるの? バレないの?」サスペンスは皆無。
バレるトリガーになる出来事が中盤で起こるんだけれど、それが全然物語の牽引力にならない。
まあ、そういう映画だなってことは、次第にわかってくるんだけれど、本作では結局それは最終的な「カップルの破局」のための材料にしかなっていなくって、そこに不満がある人もいだろうが、私は逆に潔いと思いました。
それ以上に、潜入捜査官多すぎ! 「ゼイリブ」かよ!
などと言いながら滅茶苦茶楽しめました。
本作はてきぱきしてたね~。
編集もめっちゃてきぱきしてるから、138分とは思えないくらい短く感じた。
クロスカッティングが多用されるんだけど、そこも「てきぱき感」に貢献してる。
俳優陣の演技もてきぱきてきぱき。
そういうとこ好きだな~。
序盤で、「1年後」って出るから、「あ、『坂口くんに接近しろ』の段取りは省略するんだ」と思ったけど、そこがエンディングで描かれるとは!
この呼吸も「恋愛映画」のそれですよね。
徹底的にそれをやったのが「ブルーバレンタイン」だけど、ええっと、これ何だっけ? この呼吸で「出逢った瞬間に時系列が戻って終わる恋愛映画」っていっぱいあるけど、全然思い出せないや。
「ちょっと思い出しただけ」をちょっとだけ思い出したけど、あれも「ブルーバレンタイン」の変奏曲なんで、違うな。
もっとストレートな時系列で描いて、最後の最後に「出逢い」に戻る映画あるじゃん!
500日のサマーたんは似てるけど、最後サマーたんじゃなく、オータムたんだったしね。
まあ、いいや!
ともかく最終的にそんな風に思いを馳せるくらい、本作の着地は「恋愛映画」でしたね。
でも、坂口君、ごめん! おれでもその二択、松岡ちゃん取るわ!
とはいえ、恋に落ちる瞬間が、アドレナリンが出まくる「熱病」に罹患した瞬間だと仮定するなら、本作の最後のストップモーションは、「ストップモーションで終わる映画」嫌いな私でも、ちょっと泣きましたよ。
ちなみにストップモーション・エンディングが大嫌いな私でも好きな「ストップモーションで終わる映画」は、洋画なら「明日に向って撃て」、邦画なら「Wの悲劇」。
今日、邦画部門でちょっとそれが更新されたのも心地よかったな~!