新潟の映画野郎らりほう

ザ・ディープ・ハウスの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

ザ・ディープ・ハウス(2021年製作の映画)
3.2
【メタ映画~映画の逆襲】


廃屋への侵入を試みる男女の自撮り映像が延々と続くアヴァンタイトル。
デジタル撮影されたネット動画(とゆう設定の映像)。それが映画としてスクリーン上に映し出され、私は それを観ている。
この時、何とも言い表せぬ 焦燥 / 嫌悪 / 鬼胎に私は苛まれるが、それが何故か理由ははっきりしている。
近年拡大浸食著しいネット配信/動画に依って、映画と映画館が浸食されている事に穏やかでいられぬ私個人の感情に依るものである。

その後も私が毛嫌いする配信動画的な映像が延々続き、私は何故こんなものに金を払い 観に来たかと益々嫌悪を募らせていた。


然し…。

モチーフとしてのフィルムやスクリーンが登場し、(映画内)映画が上映され出すと、それまでの私のネガティブな感情は一気に雲散霧消してゆく。
瞬間的に明滅する照明は映写時の明滅光か。レッドライトの照射は暗室を思わせる。
抑 湖への入水は“現像液への入水”なわけで、現像=有り得ない“幻像”が動き出すのは自明であると大いに得心するのである。

死んだと思っていた筈の旧来フィルムに敗北するデジタル。旧世代の逆襲。永遠に生き続ける映画とフィルム―。

私がどちら側に感情移入し肩入れして観ていたか、最早云うまでもあるまい。
ハッピーエンド ― 上映前スクリーンの様に静まりかえった最終極の静謐な湖面に、唯 そう思った―。



〈追記〉
狭小視野と限定光源/照明に依る視界不良の恐怖。水中故に制限されるアクションと クリーチャーの緩慢な動きも(定石ではあるが)精良だ。




《劇場観賞》