新潟の映画野郎らりほう

破戒の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

破戒(2022年製作の映画)
3.8
【我は―】


屋外では 乱暴で騒々しい風雨が鳴り響き、家宅内で僅かに揺めき点いていた燭台の灯りさえも、侵入許した隙間風に依って掻き消され、丑松(間宮祥太朗)の自室は
闇黒と化し、彼は只 絶念の表情を浮かべるのみ―。

丑松の心象/概況「異を許さぬ同調圧力から、必死に護り秘匿してきた僅かな希望さえも 消される無念」が 科白無しで顕現されており見事だ。


書籍頁に添えられた丑松と志保(石井杏奈)の触れそうな指先は、ラストシークエンスで漸く一つと為る ― その最主題を邪魔せぬ控え目な恋愛表現もいい。


猪子蓮太郎(眞島秀和)が云う『我は―』とは。
己が何者であるかを了知し、社会時勢を精査考察した上で、それに只 準拠同調するのではなく、その時流の中で どう振る舞うか ―自己屹立を果たすか― である。

とかく被差別部落問題といった狭義的主題に目が行きがちであるが、ここは“社会と個人の相剋”とゆう広義且つ普遍的主題こそを読み取っておきたい。




《劇場観賞》