新潟の映画野郎らりほう

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3.5
【10G プレッシャーの果てに】


稀代の“アクション”スター/トムクルーズが、その身体を操縦席に拘束され、ヘルメットと酸素マスクに依って相貌も 目元以外を覆い尽くされ「アクションスターの命とも云えるアクションが封殺された」作品とも言えようが、その大きな制限/制約の中で 尚も見せるクルーズの所作行動=“アクション”(振り返り、苦悶の表情、身体の傾き等)が絶品である。

“アクションスター”とは、何も「ブルジュハリファを登攀し 航空機にしがみつく」といったディナミスムなものばかりに非ず、前述の“繊細な所作行動を魅せる者”こそを言う。

身体拘束と表情秘匿に加え、轟音に依って 科白すらも封印されたクルーズが、それらを必死に断ち切った飛翔の果てに魅せる“アクション”が サムズアップであり そして渾身のハグである事に感動を禁じ得ない。

口頭科白を排し 所作で心情を語る ― サイレントの志しすら内包する純度の高いアクション映画である。



〈追記〉
急激なGに依って押し潰されそうになるも、それに打ち勝ち 飛翔の果てに解放される ― 上記プロットが「ブロックバスターを一身に背負うクルーズにのし掛かる重圧/プレッシャー」に透過しているのは無論であるが、CGをはじめとした非肉体/非俳優への依存顕著な現代映画界に於いて、尚も屹立せんとする俳優の矜持とも思えた。




《劇場観賞》