このレビューはネタバレを含みます
第二次世界大戦末期の東部戦線、敵の攻撃から逃げ惑うヴァイス二等兵は、友軍のトラックに助けられる。
そこにはブラント少尉率いる小隊と、民間人の女、重症者を看護するナースが乗り込んでいたが、戦争は彼らを狂気に駆り立ててゆくのだった…。
感想。
駄作配給会社である彩プロの、稀に見る良作発掘作品。
とはいえやはり彩プロなので、名作というほどではない微妙な作品。
ジャケット詐欺でタイトル詐欺な本作は、戦争アクション映画のようでありますが戦争アクション映画としては駄作です。
しかし戦争ドラマ映画としては、なかなか良く出来ております。
でもやはりそこは彩プロ、微妙でもあります、全てが惜しい作品でもあります。
なかなかに良い映像のカメラを使用した、玄人じみたカメラ構図。
音楽もシリアスさが現れていて、これまたなかなか良い。
スローモーションやピンぼけ、被写体との距離感など戦争映画として絶妙な映像センスであり、映像としての芸術性も高いです。
微妙なのは全員が英語で話す為に、人種構成が分かりづらい。
ドイツ兵の軍服を着たアメリカ兵にしか見えないといった、ドイツ兵らしさが皆無なことでしょうか。
戦線から離脱する為の逃走劇に構成された人間背景とキャラクターが、ドラマ性を生むようにうまく構成されております。
これらを物語に配置して、戦争が人間の狂気性を生み出すという人間ドラマとして描いております。
分かりづらい人種構成と背景を、ショートストーリーで説明しており、無駄のない演出でもあるので、すんなり物語へ入ってゆけるのも良いです。
信用を失った少尉と、ロシア人である愛人、反目する軍曹や独断専行しはじめる兵士達、捕虜となったロシア人ナースなどで構成された集団が、ドイツ軍の部隊へ逃げ戻る過程で繰り広げるドラマが、ありきたりでも上手く作られております。
裏切られた少尉が仲間に撃ち殺され、逃げた愛人までもが見つかって殺されるまでの話かと思いきや、そこから軍曹の話に変わってゆく主人公交代劇で、後半へと続いてゆくストーリーはクライマックスかと思わせる哀愁シーンから、また戦場へ戻される兵士の気分。
英国映画でありながらドイツ兵が主人公なのに、徹底的に悪の象徴のようにドイツ兵を描き出していますが、ラストではロシア軍に包囲されてゆく物悲しさで人間として描いております。
そして低予算作品でありながらも、G41半自動小銃、MP38短機関銃、MG42機関銃とドイツ軍の名銃達もしっかりと登場しているクオリティ。
裏切った上官を撃ち殺したり、愛人である民間人を撃ち殺したり、激戦の最中の自死や、乱戦で逃げる最中に味方を撃ち殺してしまうといった展開と、捕虜としていたロシア人にリベンジされて狙撃され、恨み骨髄に徹して銃で殴り殺されるなど、戦争の狂気がドラマティックに演出されております。
ラストがありきたりで意味不明な人助けで締めくくりますが、最後まで鑑賞できたのはドラマ性と映像センスの良さが支えていた作品ともいえます。
なかなか面白かったので、その映像センスと音楽の良さに、3点を付けさせていただきました。
ほとんどの方が彩プロの戦争アクション映画である駄作さに呆れて、レビューすらしていませんが、悪くはない彩プロにたまにある良作でした。