ひろるーく

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのひろるーくのレビュー・感想・評価

4.5
面白い。笑った。泣いた。そしてすごく考えた。

コインランドリーを経営しているエヴリン(ミシェル・ヨー)とウェイモンド(キー・ホイ・クァン)の中国系夫婦。
ちょっとボケている父親ゴンゴン(ジェームズ・ホン)と娘のジョイ(ステファニー・スー)も同居している。

税務署への申告書類、経費計上のための領収書の数々に囲まれそのプレッシャーに苦悶するエブリン。その妻になかなか離婚を言い出せない夫ウェイモンド。
それほど裕福な暮らしではない中、期待して大学まで行かせた娘のジョイは結局、ふらふらと無職な日々。彼氏を連れてくるかと思ったら彼女を連れてきた。つまり娘がレズビアンであったわけで、それにエブリンは不満だ。

そしてエブリンとウェイモンドは、車椅子の父親ゴンゴンとともに税務署に申告(修正申告か?)に向かう。
税務署のエレベーターの中で、ウェイモンドが急に人が変わる。

そして夫ウェイモンドから「君がこの宇宙を救え」と告げられる。
「ん? どういう意味?」と考えながら、税務署職員ディアドラ(ジェイミー・リー・カーティス)から細かく申告に対する説教を受けていると、自身の『脳みそ』はマルチバースの世界にジャンプする。

この宇宙なんて救えるわけないじゃん。
などと思っていただろうけど、なんとマルチバースの世界では自分はカンフーの名人で、その実力を活かし映画界でも大成功。大スターになっていたりしている。

つまりマルチバースの世界で存在するカンフーの実力をこの世界(といっても微妙だが)で発揮して、いわゆる宇宙を混乱させている悪と闘うのだ。いや、闘えてしまうのだ。

ほかにも料理人からの包丁技などさまざまなマルチバースから自身のパワーを持ってきて闘う(闘えてしまう)。

で、最終的な悪とはなんなのか、誰なのか。ラスボスは誰?

マルチバースの概念を使わなくても、誰でも自分の人生には過去があり、それはたまたま選択した道である。例えば、AとBという2つの大学に合格していて、たまたまAという大学に進んだ。でも、もしかしたらBという大学を選んでいたかもしれない。それがもう一つのユニバース。そんな選択の連続で人は人生を歩んでいる。たまたまの連続である。

M-1チャンピオンになっていたかもしれないし、総理大臣になっていたかもしれないし、ギャンブルで破綻した人生を歩んでいたかもしれない。

人は、たまたまの偶然で生きている。過去にはそれをパラレルワールドといってさまざまな小説や映画になってきた。
人は現実よりも夢想の中の自分を美化する。当たり前で、わざわざ不幸な人生を夢想する人はいまい。夢想最強なのだ。

マルチバースの世界では人間なんと理不尽な、という部分で大いに笑えるし、「家族」「日常」といった現実と向き合った時、しんみりした。

そして最後はもう、涙が自然にサラッと流れてきました。感動です。

自分が今まで生きてきたこと。自分の周りの人々。今の悩み。そして希望。
いろんなことを考えさせられます。

そして、ラスボスは誰? 自分自身のラスボスは誰なんだろう?
いろんなことを考えさせられます。

僕は、大傑作だと思いました。
とはいうものの、人によってはかなり受け止め方がちがうかも。
あと、マルチバース概念でちょっと混乱してしまってそのまま最後までわからずじまいになってしまう人もいるかもな、と思いました。

ネタバレはできないので、中身にはそれほど触れませんが、ぜひ多くの人に観て欲しい作品です。

おすすめします。
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