ひろるーく

怪物のひろるーくのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.4
個人的には、これまでの是枝裕和映画のベストといえる作品です。
かなり深く余韻の残る作品で、これ、もう一回続けて観たいなと思ったりしました(時間の関係で観れませんでしたが)。

是枝裕和という大好きな監督と、坂元裕二という大好きな脚本家。
この二人が作品を作ると聞いた時、「おお!」という感激と、「ん、もしや…」という不安と同時に起こりました。
完成した作品を観た時に、「いま、この時代に」この映画を観れたことの感謝と、興奮を感じています。それほどインパクトの強い作品でした。

物語は3つのパートに分かれています。

あ、この映画、ネタバレ注意でもあるので、深いところまでは書きません。
3つのパートは、同じ時系列なのですが、それぞれ見る立場を変えて描いています。

1つめのパートは、麦野早織(安藤サクラ)というシングルマザーの目線。早織が、ひとり息子小学校高学年のの湊(みなと=黒川想矢)の様子が変なことを感じ、いじめに遭っているのではないか? と学校に追求するパート。校長が田中裕子。担任が永山瑛太。

2つめのパートは、湊の担任ホリ先生(永山瑛太)の目線。
いじめたのは誰なのか。それともいじめは本当にあったのか。
真実はなんなのか。

3つめのパートは、湊とその友人星川くん(柊木陽太)の目線。
ここですべての真実が語られます。


1つめのパートは、どちらかというと是枝監督のイメージ。
2つめのパートは、なんとなく坂元裕二さんのイメージ。
3つめのパートは、もう完全に是枝監督のイメージです。

出演者は、
是枝作品組は安藤サクラ(万引き家族)のみかな? 間違ってたらごめん。
坂本作品組は、永山瑛太(最高の離婚、anoneなど)、田中裕子(woman、anone、初恋の悪魔などなど)、高畑充希(いつかこの恋を思いだしてきっと泣いてしまう、問題のあるレストランなど)、角田晃広(大豆田とわ子と三人の元夫など)。
坂本作品でおなじみの役者がずらり。
とくに永山瑛太は、イメージ強いですよね。

タイトルの「怪物」ですが、もちろん架空生物の怪物が出てくるわけではありません。
いったい、これら出演者の中で「怪物」は誰なのか。
それとも人間ではなく、脳みそが作り出す思いとか感情なのか。

「だーれだ」
がテーマになっています。それが是枝監督ならではの「時代性」描写の卓越した手腕と、見事な構成力で物語を作り出した坂元裕二さんの技が見事に結晶化した作品です。

映画ってすごいな。映画でここまで描けるんだなと感動しました。

そして坂本龍一さんの音楽も素晴らしかったです。
遺作になってしまいましたが、忘れられないピアノの旋律を残してくれました。合掌。

多くの方に観て欲しい作品です。
ちょっと映画館混んでるかもしれませんが、ぜひ。
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