ひろるーく

Winnyのひろるーくのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
3.8
ファイル共有ソフト「Winny」をつくった天才プログラマー金子勇が、ソフト開発による著作権法違反・公衆送信権の侵害容疑で逮捕されてからの捜査、取り調べ、裁判の過程を描く映画。

実際の弁護を担当した壇俊光弁護士のノンフィクション『Winny:天才プログラマー金子勇との7年半』が原作。
出演者はすべて実際名で、実際の事件(事件なのかどうか?)をリアルに描いている。

金子勇役は東出昌大。彼の弁護をする壇俊光弁護士役は三浦貴大。

実際の金子勇さんの映像を観るとわかるが、東出昌大はかなりリアルに寄せている。話し方、体型、見事だと思った。

金子勇さんという日本における天才プログラマーに関しては、ずっと興味を持っていた。
2000年代、ブロードバンド化したインターネット環境の中で、より自身の求める「素材」を簡単に得る方法として、ファイル共有ソフトは僕の周りでもかなり普及した。
そしてそれは著作権を簡単に脅かすものだと、多くの者は知っていたと思う。
違法性を感じながら、容易に得られる無修正ポルノから音楽ファイル、学術論文の原稿素材まで、あらゆるものを流す者さえいれば机の前で簡単に得られる環境ができていた。

2ちゃんねるなど、ネットはそのいかがわしさの正当性の元に成長していった部分もあるので、やむを得ない時代として認めることが今日無難ではあろう。

しかし根っからのパソコンオタクで天然。金子勇さん本人を目にすれば、とてもとても犯罪を助長するためにこのソフトを作ったとは到底思えない。
そのキャラクターはこの映画の最後で実写としても映るので、「まさかこの純朴そうなオタクっぽいプログラマーがねえ…」と誰もが思うであろう。

強引な捜査は当時から話題にはなっていた。
そして、ネットに関しては「ほぼ無知」の捜査官が、著作権侵害という、このソフトの誕生の結果生まれた犯罪に強引に結びつけた。

ただしかし、金子勇さん本人にはもちろんその気はないが、ファイル共有ソフトが著作権を脅かすものだということは、誰もが知っていたんだよね。
映画の中で、ナイフで人を刺せば犯罪。しかしナイフを作った人は犯罪には問われないよね、という会話がでる。
しかし、ナイフはそもそも肉や野菜といった食材を切ったりするもの。別の目的が明らかである。
でもファイル共有ソフトはそもそもが著作物を共有するもの(まあ、すべてが著作物ではないけれども)。
そういう意味では、拳銃を作った人に近いのかもしれない。拳銃は殺傷という犯罪が目的であるから。まあ、例えはむずかしいか。

いずれにしても、このP2Pを使った「ファイル共有」の技術は、言うまでもなく、今日では当たり前のもの。この技術があったから、クラウド技術が進化し、よりインターネットによる享受が進んだことは事実である。

もし金子勇さんが逮捕されずに、さらなるプログラミングを続けていたら、日本発のIT技術が次々と発信されていただろうということは、多くの人が語るとおりである。悔やまれる。
天才ゆえの不合理。時代が合わないことの不合理。


映画は、この金子勇さんのWinnyに絡む物語と、愛媛県警での署内あげての不正請求事件とが並行して描かれます。
愛媛県警の方は、吉岡秀隆がこの署内の犯罪を告発するストーリー。
正義を貫こうとすると、障害が出る。命まで脅かされる事態に。
しかし、警察の不正の証拠は、ファイル共有ソフトにアップされます。
不正を暴く告発の道具としてファイル共有ソフトが使われます。
正義の道具として、ですね。
2つのストーリーが、この映画の中で共有されるわけです。

映画としては約2時間。途中ダレることもなく楽しめました。
この時代を知らない今の10代〜20代にぜひ観ていただきたい映画です。
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