もるがな

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのもるがなのネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

アクションや設定はブッ飛んでおり、クレヨンしんちゃんの映画版みたいなノリでエンタメとして見る分には楽しめるものの、全体的にはやや冗長で、ハナからどう転がるかわかりきってる話を執拗にやったわりには丁寧さに欠ける印象。特にアカデミー賞受賞作品として見るとテーマの練り込みの甘さであったり脚本の粗が目についてしまい、そっち方面では全く評価ができなかった。

欧米リベラルの多様性による中国的大家族主義の「許容」は流石に無理筋ではないかと感じてしまい、その二つは相容れそうで相容れないものである。結局ハリウッドの家族愛に落ち着いてしまったあたりに解像度の限界を感じてしまい、それで語るにはやや浅く、そこに入り込む移民や家父長制というファクターを結果として擁護するような形になった幕引きは当初の切り口を考えるとやはり大きな失敗だったように感じる。

特に娘のガールフレンドを世代間軋轢のある理解のない祖父に母親が紹介したくだりなどは、母親主観では娘を認めた形になっているものの、娘視点だとまごうことなき許諾を得てないアウティングであり、そこに娘の主観は存在しない。支配的な父親=祖父との決別と娘への愛が、結果的に祖父のような娘への支配的感情として機能したのは因果というか呪いのように受け取れるし、そこに対しての解決がややおざなりだったのは個人的には受け入れられないものがある。そもそものマルチバースによる才能のインストールすら、成功した世界線の話ばかりであり、可能性とは言いつつも、どこまでいっても主観的で自己中心的な世界観の作品だなとさえ思ってしまった。

見てて一番面白かったのはフルチンカンフーとケツにブッ刺さった男で、そこだけは100点満点の映画だった。
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