ハル奮闘篇

すずめの戸締まりのハル奮闘篇のレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
5.0
【 ネタバレを最小限にして、作り手の思いを 想像してみました 】【 追記:サッカーワールドカップ決勝とM-1グランプリ … 僕としてはこのレビューと地続きです。どうぞお読みください 】

 フィルマの皆さんのレビューを含め、事前情報を頑なにシャットして、数日前にようやく観られました。
 なにぶんまだ「新海誠本2」のインタビューも、皆さんのレビューや評論家の主張も読んでいないので、もし、この大ヒット映画について、「日本中、そんなこと園児だって言ってるわ、いまどき!」「ちなみに村神様って知ってる、お前?」っていう空気だったらめっちゃ恥ずかしいんですが(笑)

 僕は新海誠監督の最近三部作に関して「映画の作り手たちの姿勢」にとても共感しています。

 若者たちを物語で惹きつけて、さらに今回は読み物を無料配布して語りかける。
 知り合いはもちろん、見知らぬ者同士がSNSで意見を交わして、映画の肯定も否定も含めて、みんなで考える土壌を作る。
 そうして「人は多様だし、多様であっていいんだと気づく」、そういうきっかけになる映画づくり。

 僕には作り手たちの、そんな明確な姿勢、強い覚悟があるように感じられました。

 僕たち映画ファンは「映画には世の中を変える力があるんだ」と気持ちの底のほうでそう信じていますよね。多くの作り手たちもそれを目指して映画作りに関わるのでしょう。

 だけど、いまの日本に、そんな夢物語みたいなことが本当にできそうな「チーム」が生まれつつある!
 これは素晴らしいことだと感動しています。

 で、オッサンはどうだったかと言いますと。

 「終盤、おばさんがドライブインで姪のすずめに対する気持ちを吐露するシーン」と、続く「毎日繰り返される、各家庭の玄関でのシーン」で鼻水が出ました。


【追記 サッカーワールドカップ決勝とM-1グランプリについて 】

 映画と関係ないじゃないかと思われるでしょうけれども、僕のレビューとしては、まったく地続きのことです。
 読んでいただけたら本当に嬉しいです。

〇 2022年12月18日 M-1グランプリ

番組が始まるところから、例年とは違うタイプの緊張感がスタジオに張り詰めているように感じた。10組20人の若者たちによる賞レースとは、何か別の緊張感があるように思えた。

1組のコンビが、自分たちの日ごろ抱える不満を叫びまくる、というネタを、決勝でも披露した。それは多くの人に揶揄されることも承知で、それでも覚悟を決めて、捨て身で叫び続けているうように思えた。彼らの言葉に共感する人は日本中にたくさんいるんだろうなと僕は想像した。

僕から見て「お笑いを心の底から愛しているんだろうな」と感じられる審査員は全員、優勝者の審査に頭を悩ませながらも、目に涙を浮かべているように見えた。決勝に残った3組ともがそれぞれに必死に努力し続けて今の舞台にいることを、その人たちは自分の経験を通して知っているからなんだろうなと想像した。

そして残念ながら、僕からは「お笑いを心の底から愛しているようには見えなかった」審査員にも、その場にいる、何か僕が知らない事情があるんだろうなと思った。

最後、不満ネタを披露したコンビの1人が、舞台を降りてマイクを向けられて、こんなふうに言った。「言いたいことはもう全部言ったんで」。

〇 2022年日本時間12月19日 サッカーワールドカップ決勝

僕のような にわかサッカーファンが、この素晴らしい歴史的一戦、大きなひとつの歴史が終わり、始まったかもしれない試合のすべてをライブで観られた幸運と幸福に心から感謝したい。

テレビ局のスタジオには、日本代表のゴールキーパーをつとめた選手がゲストとして招かれていた。日本初のベスト8をかけて戦って惜しくも敗れて以降、この選手にはそのポジションの責任感からも、すごく多くの心労が重なっているだろうな、と僕は想像した。

元日本代表の解説者のお二人は、僕のような素人が考えも及ばない、選手たちや監督をはじめとするスタッフたちが、今日ここに立つために、どんな年月を重ねてきたのか、彼らはどう感じてどう動いているのか、ということについての自身の考えを、とてもわかりやすく教えてくれた。特にゴールキーパーというポジションがどういうものなのか、詳しく教えてくれた。

その解説者のお二人が試合後、「これこそ伝説になる素晴らしい試合だと私は思います」と言った言葉は、声が震えているように聞こえた。

そして先ほどのゲストに呼ばれた日本代表のゴールキーパーは、今終わった試合について尋ねられて、晴れ晴れとした表情でこんなことを語った。
「素晴らしい試合でした。今すぐサッカーがしたくなりました」。

試合後の関係者へのインタビューはどれも良かったけれど、僕が特に心に残ったのは、アルゼンチンを36年ぶりの優勝に導いた監督の言葉だった。
「家族に心から感謝したい。もちろんプレッシャーは大きなものでした。でも私は小さい頃から、父に 人を悪く言うなと教えられました」。

この中継を観て、僕は自分なりに多くのことを感じ、自分なりに気づいた。そうして、例えば、開催国カタールの主催者たちの気持ちや、世紀の一戦を裁いた審判員たちや、日本での実況をつとめあげたテレビ局のアナウンサーの気持ちなどを想像してみた。

解説者のひとりが、ほとんど嗚咽するようにこう言った。
「この試合を観た世界中の人が、サッカーって素晴らしい。スポーツって素晴らしい、と思っているでしょう」。

今日の2つの出来事の感動を胸を刻みつけて、これを「人生って素晴らしい」に繋げたい。皆さんに繋げてほしい。

「さあ行け、日本プロ野球!」

以上です。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。感謝します。