へたれ

生きる LIVINGのへたれのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.4
良かったとこ1 ビル・ナイの抑制演技
志村喬とは明らかに別アプローチでキャラクターが作られていて、ここだけはリメイクした価値があった。志村喬が終始瞬きもせずにウルウル目の眼力で訴え続けたのとは対照的に、ビル・ナイは口も開けずに最小限の表情でただ現実を受け入れる男を演じ切ったのが良かった。

良かったとこ2 無駄のないセリフ
全体的にセリフは省略気味で、俳優が演技でその空白を埋めていくタイプの会話になっているのが良かった。

ダメだったとこ1 三幕目の力弱さ
黒澤版では後半のお通夜が集団劇として名シーンだけど、ここに該当するシーンの魅力がなかった。アレックス・シャープが演じる新人にフォーカスを当てたせいで、役所の他の部下たちの印象が薄くなってしまい、亡き人を偲ぶモブのようになってしまっていた。

ダメだったとこ2 省略しすぎて消化しきれなかったプロット
黒澤版から40分短くして新要素も追加したためか、省略しすぎて話が盛り上がらないプロットがいくつかあった。
・主人公がマーガレット(黒澤版の小田切とよ)につきまとう中で、彼女との会話の中から残された人生の目的を見出すという重要なシーンが、主人公の自己解決になってしまっており、マーガレットのストーリー上の必要性が乏しい。さらに、主人公が情熱を傾ける対象が公園の造成である理由も乏しくなってしまった。
・主人公が公園の造成に向けてどの程度尽力したのかというエピソードが分かりにくくなっている。黒澤版みたいにヤクザと渡りあえとまでは言わないけど、所内で頭を下げた程度の功績だと、生まれ変わったみたいに働いたようには見えない。
へたれ

へたれ