へたれ

エンパイア・オブ・ライトのへたれのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
2.4
良かったとこ1 構図と美しい撮影
特に複数の人物がいるシーンでは、手すりや窓の庇などを使ってカメラの目線を巧みに誘導する構図が印象的。行ったことがないのに思い出の場所の絵を見ているような気になってくる。
絶景と言えるような風景ではないのに、美しく見えるから不思議。
一方、登場人物が一人のシーンは人物を中心に据えた左右対称の構図になっていて、これもサム・メンデスの映画おなじみの構図で安定感があった。

良かったとこ2 マイケル・ワードの演技
彼が演じた役が、ストーリー上の都合に左右される人間味がない役で、演じるのが難しそう。そんな難役をこなしたうえで、脚本にはちゃんと書かれていない黒人としての諦めや悲しみまで表現できているのが良かった。

ダメだったとこ デタラメなストーリーテリング
複数のテーマが整理されることなくバラバラに置かれているので、この映画が何についての映画なのか、終盤まで分からない。この映画にあったと思われるテーマは以下のようなもの。
1. 精神を病んだ人の長いリハビリ
2. 立場が弱い女性を搾取する男性問題
3. 異人種間恋愛のすれ違い
4. 1980年代イギリスにおける人種差別(ブレグジット後の移民問題と重ね合わせて)
5. いわゆる「映画の魔法」を讃える
6. 1980年代カルチャーへのノスタルジー

端的に言って詰め込みすぎで、当然どれにも深入りせずに綺麗な映像だけを見せられて終わる。劇場公開映画としての水準に達してない脚本なので、これは面白くなりようがない。
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