Growltiger

ティルのGrowltigerのレビュー・感想・評価

ティル(2022年製作の映画)
4.0
1955年アメリカで14歳の黒人少年が白人の女性に口笛を吹いたことがきっかけでリンチをうけ惨殺された。
人種差別が色濃く残る時代、遺された少年の母親の行動はアメリカ社会に大きな影響を与えた。


少し聞いたことがある程度の事件について、映画を通して詳しく知ることが出来て良かった。
映画ってエンターテイメントというだけではなく、こういう史実を知るきっかけにもなるから有り難い。

内容は辛いので、ある程度観るのに覚悟は必要だけれど、目を背けない勇気も必要。
惨殺された息子の棺を敢えて開けて、多くの人に公開した母親の想いは、映画を通してだが現代の日本にも届けられている。観るべきだと思う。

ネットで事件について調べたが、事件の経緯や壮絶なリンチの内容と写真、裁判の様子やその後のことなど詳しく載っていて、驚くことばかりだった。
映画にもあったが黒人の証人が白人容疑者に対して犯人は彼だと指をさしたシーンも、アメリカの裁判史上で初となる行動だったらしい。
そんな時代だったんだな。

そんな時代...でもねえ、14歳の子にどうしてこんな酷いことが出来るの...。 
映画で役者がやってるのを観ていても辛いが、実際に起きた事という思いが重なるから2重に悔しくて、悲しくて、涙が止まらなかった。

こんなに酷い事件でも当時は「よくある事件を母親が大袈裟に騒いでいる」としか白人からは受け止めて貰えないのがまたやるせない。
当時はそういう価値観でしかなかったのだろう。

現代のアメリカで、この映画を観て、白人の加害者達を擁護できる白人はほとんどいないと思う(思いたい)。
こういう出来事の積み重ねが人々の考え方や価値観、倫理観に影響を与えていったのだろうな。

映画自体は「あ、もう終わりなのか」という感じで終わってしまったが、物語の結末は裁判の勝ち負けではない。
今も終わらずに続いている。