Growltiger

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のGrowltigerのレビュー・感想・評価

4.5
大ヒットミュージカル『RENT/レント』を生んだ作曲家ジョナサン・ラーソン。彼がRENTを世に送り出す前につくった本人の自伝的舞台『tic,tic...BOOM!』がついに映画化。

作曲家(ミュージカル作家)として未だに売れないジョン(ジョナサン)。
30歳の誕生日が迫るなか、聞こえてくるチクタクと時を刻む音。
それは作曲家としてのタイムリミットなのか?


いや〜、ついに映画化してくれましたか。
内容と曲は知っていたけど、実際の舞台を観たことは無かったので、今回の映画化はとても嬉しいです。
ジョナサンを演じたアンドリュー・ガーフィールドもとても良かった。
『アメイジング・スパイダーマン』のイメージだったけど、歌も歌える凄い役者さんですね。彼が演じてくれて良かった。

この作品って、ミュージカル作りに散々悩んだジョナサンが、最終的にそんな自分の姿をそのまま作品にして、更に初演はご本人が主演をやっちゃってたんだから、凄いですよね(しかもそれがヒット作になるとは)。
歌はどれも“ジョナサンの心の声”と思って良いでしょうか。
良い歌多いんですよ。

「Sunday」は、壮大な美しい曲だけど、内容はバイト先のダイナーに来る客達に「家で食えよ」的な事を言っていて、この曲作った時は本当に客達にイライラしてたのかな?と想像したり(笑)。

恋人との喧嘩曲「Therapy」も徐々にテンポアップしていく掛け合いの歌が実際の口喧嘩のようで面白い。
映画であったような「これを曲にしようとしてるわね?」ってやり取りがあったかは知らないけど...してたんだろうな〜。

一番好きな曲は「30/90」。
この作品のテーマとも言える曲。
30歳って人生で結構大きな節目だと思います。おおよそ人生の1/3にあたる年齢。
「まだ若いよ」とは言われるけど、“若者”とも言い難い。
世間的には「もういい歳なんだし」って言われる頃で、夢を追うのは30歳までと期限にしてる人は多いんじゃないでしょうか?
実際、親友のマイケルは俳優の夢に見切りをつけ、新しいスタートをきっている状況。
いつまでも夢を追う事が本当に賢明なのか、ジョナサン自身、とても自問したんだろうなと感じられます。

でも作中語られるようにもっと時間のない人もいるんですよね...。
今が人生の1/3かなんてのも本当は分からない。

『RENT』の“No Day But Today(あるのは今日という日だけ)”というテーマがここでもズシリと胸に響きます。

今作はジョナサンの生き方や、所々『RENT』を思わせるストーリーや曲がRENTファンにはたまりません。
親友のマイケルなんか、RENTのベニーがまさに当てはまるし、身近な人をエイズで亡くした悲しみや孤独感がRENTのロジャーやマークに投影されてるんだなと思うと感慨深い。

もうこれは『RENT』とセットで観ましょう。
『RENT』は映画版と舞台版とがありますが、舞台版の『RENT/ライヴ・オン・ブロードウェイ』の方は映画版でカットされた曲も入っているのでお勧め。


とりとめのないレビューですが、最後に心からの敬意を込めて

ありがとう ジョナサン・ラーソン