カルダモン

TAR/ターのカルダモンのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

一応ネタバレ設定にしているけれど、ネタは一切理解できておりません。

面食らっている今現在、5月20日午後9時45分。ナニこの映画、、、。こんなヘンな映画だと思ってなかったし、一度では消化しきれない謎がいくつも散りばめられていて興味が尽きない。この映画の存在を知った時、実話ベースなのかと思っていたのだが、のちに架空の人物であると知り俄然興味が湧いた。

まずはなによりケイト・ブランシェットの圧倒的な存在感。これ女性指揮者という設定だけどほとんど男として描いている。いやもう両性具有なのか。色々掘り下げたいことが山積みなのだがそれは追々。

この映画でもっとも惹きつけられたのは音の表現。それもオーケストラの音ではなく生活の中で耳に障る雑音、そこから生じる不吉さだった。劇場で聴いてもすごく微細な音の表現がされていたので、おそらく自宅の環境でこの映画を見たとしてもヘッドフォンをしない限りはこの不穏な感じは届いてこない。

世界最高峰の女性指揮者リディア・ター。
完璧だと思われた彼女の人生は、ある問題を起点にコントロールを失っていく。オーケストラで大人数を指揮することはできても、自分の生活は制御しきれていない。
彼女の心理状態に呼応するかのようなノイズ音。ボールペンをカチカチノックする音、冷蔵庫のブーンと鳴る音、どこからともなく聞こえるチャイム音、カーエアコンの風向口。不意に差し込まれるこれらの音が、とても怖かった。この感覚『ヘレディタリー』に近いものがあり、ケイト・ブランシェットがトニ・コレットに見える瞬間も。

実家に戻り、自室で昔録画したオーケストラのビデオを見返すシーンにジワっときた。彼女が育った家庭は決して裕福ではなく、クラシックとは程遠い生活であったに違いない。音楽によって言葉では到底届かない無限の感動を得たはずが、今では自身を滅ぼすまでの力を持ってしまった。どこで、なにが変わってしまったのか。やつれた顔が少女のように見えた。