もるがな

映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズのもるがなのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

イン・ザ・ウッズ=藪の中とは言い得て妙である。総集編+αでありながら、インタビュー形式で過去回想を浮かび上がらせるという構成上、導入前に新規カットが入るためかなり新鮮に見れたのはかなり満足感があった。登場キャラ視点による再解釈は副音声コメンタリーのような面白さがあり、キャラによっては平気で嘘をついたり言葉に裏があったりするのもかなりリアルで、湊かなえのミステリっぽさもあった。

ただ少し残念な部分として、仕方がないことではあるが、アニメ版と比較するとカットされた部分がもったいないように感じてしまう。特に田中革命のエピソードが丸々なかったので、最悪に最悪を重ねた田中の蛮行が通り魔のような印象になったのは知っている身で見てももったいないように感じたし、馬場や長嶋といった本筋の話に関わりの薄いサブキャラはその辺で割りを喰ったような印象もある。

しかしながらインタビュー形式の劇場版ならではの面白さもあり、たとえば樺沢がインタビュアーを見て「女の子が来るって聞いていたけど……」というような台詞を言うわけだが、インタビュアーの片割れが自分の愛人だからこそ、新顔の「女の子」としてカウントしないというのは凄くリアルではあるし、なぜ白川さんが小戸川のピンチに駆けつけることができたのか?タクシーの中のスマホは誰が?とか、アニメ版では明かされてなかった疑問点に対してある程度の解答が用意されているため、色々と掘っていって考えていく楽しみが本作にはある。

そして誰もが一番楽しみにしていたであろう本編ラストのシーンと、映画版で描かれた「その後」は、ボカしはしたもののしっかりとオチを用意しており、ベタではありながらもホッとしてしまった。ビターな味わいとしてはアニメ版が完璧で蛇足のようにも思うが、これは真相が知りたくて足を運んだ観客向けではなくわ作品そのものが好きな人向けの至って真摯なファンサービスなのだろう。個人的にはそれはそれでいいと思う。

オッドタクシーとは一言で言うなら「因果応報」の物語である。良きも悪しきもその行為はきっちりと収束する。助けたのはTVの表彰の件を見る限りは垣花だろうし、探偵への依頼人は執筆に色気を出したタエ子ママなのだろうか。しきりに「好き」を言わせようとする白川さんはあざといながらも可愛かったし、見終わった今、本当の意味で「終わり」を実感してしまって少し寂しくなってしまった。

本編を見ずに本作を見ることはオススメはしないが、かといって復習として見るのもオススメせず、ちょっと前に見たアニメ版をもう一度劇場で見るぐらいの距離感がちょうどいい作品であると思う。オッドタクシーは間違いなく2021年のアニメの中ではNo.1です。傑作。
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