great兄やん

苦い涙のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

苦い涙(2022年製作の映画)
4.2
【一言で言うと】
「愛の“ヒエラルキー”」

[あらすじ]
恋人と別れたばかりで落ち込んでいた有名映画監督ピーター・フォン・カントのアパルトマンに、親友である大女優シドニーがアミールという青年を連れて訪ねてくる。艶やかな美しさのアミールにすっかり心を奪われたピーターは、彼を自分のアパルトマンに住まわせ、映画界で活躍できるよう手助けするが...。

8月6日に観たやつ。

愛するという“追従”。追えば追うほどその愛は次第に“隷属”へと変貌を遂げ、次第にこき使う者からこき“使われる”者として滑稽な様相と成す主人公の姿に痛々しくも哀れな気持ちになった。
“人は愛するものを殺す”といったセリフが出てくるように、直接的な意味ではないもののその愛によって自身の“自我”というのが壊死していくのだと感じましたね🤔...なんというか…人を狂わせますよね、愛って。

リメイク元であるファスビンダー監督のはまだ未鑑賞であり、フランソワ・オゾン監督は如何にあの鬼才の作品をどう“調理”するのか…という期待が高かったが、やはり多彩な作品を撮る監督だからか設定も巧いしストーリーも変幻自在でメチャクチャ面白い。俳優の活かし方も抜群でしたし、85分という小規模な作品ながらも満足度はかなり高かったですね😌

それに主人公ピーター・フォン・カントを演じたドゥニ・メノーシェの演技がまた絶品で、図体のデカい猛々しさがありながらもメンヘラの如く恋に盲目となるあのギャップが最高に哀れで良かったです(褒めてます笑)
最初は“自分から恋人をフってやったぜ😤”とイキリ散らかしてた主人公がアミールと出会い全てにおいて破滅的な行動を取るあの情けなさも悲哀と人間味に満ちた生々しさを感じましたし、性格に難ありなキャラでありながらもコミカルに徹したあの表現が最高に良いポイントでしたね😊

とにかく愛に飢えた男による愛憎劇というベタなストーリーではあったが、コミカルにも生々しく、そして悲喜交々な巧い演出に終始魅入ってしまう一本でした。

愛には様々な“形”があるとは言いますが、ここまで歪に拗れた形でも果たして愛と言えるのか(ー ー;)…という思いがよぎりましたし、多分だがリメイク元であるファスビンダー監督のは、“愛憎”の部分というのがもっともっと強烈なものとして映していると思う笑。まぁ観てみないと分からないんですけどね😅...

とりあえず束縛まみれの愛は長く続かないし、愛の“過剰摂取”ほど危険なものはないと感じた今日この頃。いやはや、何事にも“用法用量”はきっちり守らないとですね😔...