great兄やん

ドント・ウォーリー・ダーリンのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

3.5
【一言で言うと】
「“俺”たちの理想郷」

[あらすじ]
完璧な生活が保証された理想の街ビクトリーで、愛する夫ジャックと暮らすアリス。この街には「夫は働き、妻は専業主婦でなければならない」「街から勝手に出てはいけない」といったルールが定められていた。あるとき、隣人が見知らぬ男たちに連れ去られるのを見かけて以降、彼女の周りで不可解な出来事が頻発するようになる。精神的に不安定になり周囲から心配されるアリスだったが...。

第35回東京国際映画祭にて鑑賞。

期待していたよりも普通…てかオチが“そこで終わるの!?(゚ω゚)”的なラストだったのでかな〜りモヤモヤする残念感があったが、“完璧”から徐々に“不穏”の片鱗を見せにくる描写の巧さと不安を煽る音響や演出の部分でだいぶ面白味が効いてた、というか助けられてたような気がします🤔...

アイデアとしては全然悪くないですし、むしろ最大限に活かせればなかなかの上質スリラーに変貌を遂げたであろうに...ただまぁ結局のところ純粋に最後までハラハラしたんで結果オーライなんですけどね笑

とにかくフローレンス・ピューの凄まじい演技力の高さは今作でも健在で、幸せな生活から綻びが生じ、ジワジワと幻覚や焦燥が精神を蝕んでいく様相を渾身の演技で見せつけているので、観てるこちらもリアルに胸が苦しくなるほど。
にしても彼女はホント憔悴しきった役が似合うこと(^_^;)...『ミッドサマー』といい、精神的に追い詰められるほど“本領発揮”を促す特異体質でもあるのだろうか?😅

それに男社会の滑稽さを痛烈に皮肉ったメッセージ性も新進気鋭のオリヴィア・ワイルド監督ならではの鋭い視点でしたし、長編2作目にしてこのデリケートな題材をエンタメ性強めで且つメッセージ性も希薄にさせない絶妙な塩梅で仕立てたのが本当に凄い。
しかも監督だけでなく今作では“女優”としてもこなしているという二刀流ぶり...まぁこれに関しては監督業だけに専念してればストーリーとしても面白さとしてもブレブレにならなかったのでは…って思いますね(^◇^;)

とにかく幸せにおける“本質”とは一体なんなのか?完璧な生活を望むことは“誰もが”望んでいることなのか?という“平等な”幸せについて考えさせられると共に、不安を増長させる緊迫感に終始ドキドキ感を味わえる一本でした。

一昔前の日本でも“妻は夫の3歩後ろを歩け”や“女房は台所からもらえ”など、今考えれば相当エグい男尊女卑が横行していた訳であって、そんな“旧式”の考えを持つ男どもはこの映画を観て果たしてあれを本当の理想郷だと言えるのか…という“怒り”すらも感じてしまう。

みんなの理想郷は、さしずめ“俺”たちの理想郷。その“みんな”に“私たち”は入っていない。何故ならそれが一番都合が良いのだから...