みかぽん

グッド・ナースのみかぽんのレビュー・感想・評価

グッド・ナース(2022年製作の映画)
3.7
昔、仕事関係である年配医師と懇意にして頂いていた頃、何かの話題をきっかけに、その医師はこんな話を聞かせてくれた。
若い頃、所属していた医局に、ある別の医師から〝皆さんで〟と差し入れがあった。このお菓子を大喜びで食した面々は全員チフスに罹った。差し入れ主の医師はこれに及ばず、方々にチフス菌入りの食べ物を配り歩き、それによって死者も出た。証拠不十分の怪しい事例も加えれば、被害の数は数百人に及んだ、と。
その場で聴いていた我々は凍りつき、え、何でそんな事を…と弱々しい声で尋ねると医師はこう締めくくった。
分からないねぇ。学閥優先な大学の体質に不満があったとか、科学者としての好奇心が一線を越えさせたとか、当時は色んな憶測が飛んだけどね。いずれにしても本当の理由は本人に聞くしかない。まぁはっきりしているのは、我々の考えるやって良い悪いの容易な区別が、彼には欠落していたんだろう。

本作の最後に流れたテロップから、こうした何十年も前の記憶が一瞬で蘇った。

インシュリンを生理食塩水に混ぜ、これをゆっくり投与してじわじわ作用させて行くことで点滴に容疑を持たせない工夫をし、ジゴキシンの念押し追加で確実に仕留める殺人者。そうした事実を確信しながらも隠蔽に終始し、事件をなきものにして責任回避を図った病院側。それが殺人者の転職の数だけあったと言う事実も恐ろし過ぎるが、裏取りをしている間に更なる犠牲者が出れば、それはそれで恐ろし過ぎる話で、安易に容疑者を泳がせられなかったのではないか。そもそも病院は人助けの場所であり、殺人犯を探し出す場所ではないのだから、と推測をしてみたり(決して擁護している訳ではありません💦)。

テッド・バンディも然りだが、一見、誰よりも感じ良い体裁を整えた無差別殺人犯のオンオフのスイッチは、一体何処にあるのだろう…、と私如きがアタマを廻らせた所で、容易に答えが出るはずもないのだけれど😰😰😰。
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