シマすけ

NOPE/ノープのシマすけのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.2
【見るか、見られるか。】


あらすじ :
カリフォルニアで映画撮影用の馬を飼育しているOJと妹のエメラルドは、ある夜に飼育中の馬の一頭が雲に吸い上げられる怪奇現象を目撃する。エメラルドは一攫千金を目論みこの様子をバズり動画として撮影しようとするが、雲はUAPとしての正体を表し、彼らに牙を剥き始める。


ジョーダン・ピール監督作品では一番好きな映画かも。

「ゲット・アウト」「アス」でも監督のメッセージが良く伝わりハッとする映画でしたが、両作とも多すぎる隠喩表現に頭が疲れてしまったり、説明的なネタバラシにどゆこと?となったりで、考察することやメッセージがメインになってしまっていて映画の魅力や面白さが追いついていない感があり、自分には少し合わないかな〜と思っていました。
今作も、
「映画界から不当に捨てられた立役者たち」
「見る事と見られる事」
「見世物にされた者の逆襲」
「なんでも支配出来ると驕る人間への警鐘」
など様々なメッセージが良く伝わったのですが、それと同時に娯楽映画としてめちゃくちゃ怖くて楽しくて面白かったです。

この映画、SFでありながら冒頭からイヤ〜な演出が続いてめっちゃホラーです。
まず音が怖い。
本作のテーマを表す重要な場面として、テレビ番組でチンパンジーが凶暴化して出演者を殺傷する凄惨なシーンが度々挟まれるのですが、殴打する鈍い音や悲鳴、滴る血、目線が合った時の恐怖がかなりのもので、掴みから抜群でした。
UAPが主人公達を襲おうとする場面なんか「ジョーズ」「ジュラシック・パーク」を彷彿とさせる恐怖と緊張で満ち溢れていて、息が詰まるとはこの事。事を終えて飛び去る時の音もサイコーに悪趣味(褒め言葉)でしたね。

物語の節目節目で真っ暗な画面にテロップが表示されるのは昔のハリウッド映画ぽいし、「AKIRA」「エヴァンゲリオン」など日本の名作のオマージュも入っているのが嬉しいです。
若干間延び気味なパートはあるものの、ジャンルが次々と変わっていってワクワクするし、しっかりとオチをつけてくれた事やイヤな人物が出てこないのも良かったです。


ドキドキヒヤヒヤで単純にホラーSFとして面白かったし、監督の映画への愛が伝わっただけでなくその裏にある業界の闇も暴き、「見るか見ないかの選択」という普遍的なメッセージも込められていて、個人的には大満足の映画でした。
エキスポで真のIMAXを体感したいのと、色々と取りこぼしてしまった部分も確認したく、もう一度見に行くつもりです。
シマすけ

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