シマすけ

Kids Return キッズ・リターンのシマすけのレビュー・感想・評価

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)
4.6
【生きろ。】


あらすじ :
落ちこぼれ高校生のマサルとシンジは学校でイタズラやカツアゲを繰り返し、先の見えない日々を送っていた。ある日マサルはカツアゲしようとした相手が連れてきたボクサーにノックアウトされる。悔しくてボクシングを習い始めたマサルだが、皮肉にも才能があったのは一緒に誘ったシンジの方だった。そしてシンジはボクサーの道へ進み、マサルは極道として頭角を現していく。


新たな年が明けましたね。今後ともよろしくお願いします。
新年1本目は強い希望のある映画を語りたく、キッズ・リターンを選びました。


北野武監督作品は以前から興味があったのですが、どうも難解な雰囲気があって手をつけれずじまいでした。色々調べた結果、本作が初心者でもとっつきやすく、かつたけしの最高傑作との意見が多く、思い切ってソフトを購入したんです(頼むから配信してくれ…)。そしてブルーレイをパソコンに入れて再生。

エンドロールで動けず。すごいわコレ。

言ってしまえば若者の無邪気な青春物語であり、クスッとなる微笑ましさもあるのですが、どこか冷たさがまとわりついている切なくて残酷な物語なんです。
映画評論家の故・淀川長治さんは「自転車をふたり漕ぎする場面が素晴らしいね」と絶賛され、なるほどな、と。マサルは前を向いてハンドルを握り、シンジは後ろを向きながらペダルを漕ぐ。ふたりは楽しそうにはしゃいでいるが、自転車はフラフラで今にもコケてしまいそうな危うさ。
思えばマサルとシンジをそのまま表しているようです。

物語が進むにつれて残酷な空気が濃くなっていき、胸が締め付けられていきます。どうなってしまうのかと心配しました。
そして……


最後のセリフはぜひ自分の耳で聞いて下さい。
自分は心から熱いものが込み上げてきました。エンドロールで久石譲の音楽とたけしの作風が見事に化学反応を起こしていて、辛いとき、絶望したときにこそ強く輝く言葉であり、見てほしい映画です。

たけしがバイク事故で一命を取り留めて復帰後の一作目がコレなんですね。見事としか言えません。
シマすけ

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