シマすけ

ウィッカーマンのシマすけのネタバレレビュー・内容・結末

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

【傲慢への罰】


ミッドサマーの元ネタということで以前から見たかった作品。確かに見覚えのある光景が次々と出て来ますが、観賞後の後味は全く異なるものでした。
あちらは今作の材料を再構築して救いと解放、そして共感を描いたのに対し、こちらはもっとドライにカルト集団の不条理ぶりを映している印象です。

主人公のお巡りさんは熱心なキリスト教徒であり、土着的で性に開放的な島の風習を目の当たりにして困惑と嫌悪を覚えるのですが、
「我が主こそが絶対!それ以外の宗教なんぞ認めん!」
な態度が見え見えであり、異文化を見下している感じが絶妙に共感できません。村人たちへのやけに高圧的な態度なのも鼻につく。

そんなキリスト教の傲慢さを批判している一方で、サマーアイル島の宗教の異常ぶりがじわじわと分かってくるのも怖い。
日本にも自然崇拝や生殖器崇拝があるので、そこまで異常か?と余裕ぶって見ていたのも束の間、村人たちの腹の内が見えてくるにつれてあれ?これヤバくない?と思った頃にはもう手遅れ、な恐怖。
一神教と土着信仰のどちらかを正義にするのではなく、両者の溝が深まった末に惨劇が起こるのが生々しくてイヤな感じです。


思っていたよりドキュメンタリー風なホラーであり、登場人物に感情移入しづらいのもあり淡々と物事が進んでいくのですが、それ故に冷徹さと狂気が際立っている映画でした。
ミッドサマーは主人公がある意味救われる爽快さがありましたが、ウィッカーマンにはそれがありません。主人公からすれば絶対的な存在である神が敗れた絶望、村人たちもいずれ凶作で飢える未来が予想でき、なんとも救いがなく後味が悪くなる結末です。


村人たちが朗らかに合唱するなか、生贄にされた主人公の断末魔が響きわたるオチが怖かった…
シマすけ

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