えいがうるふ

MEN 同じ顔の男たちのえいがうるふのレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
4.1
周到に作り込んだ映像美の中に不穏さを散りばめつつ話が進み、終盤には当初の想像を遥かに超えるおぞましい映像が目の前に繰り広げられる静かな阿鼻叫喚が待っているという、もはやA24のお家芸を感じる異形スリラー。
こちらもオープニングのちょっとしたキモ映像さえやりすごしてしまえば、序盤は視界の森林浴とでも言いたくなるような美しい情景が続く。が、A24展開に慣れた者としては緑あふれる静かな森やカントリーハウスに心安らぐどころか、むしろ絶対にこのままでは済まないだろうという期待と不安が募っていく。
案の定、遠景にとある人物が姿を現したあたりから不穏な空気が一気に濃くなり始め、場面が切り替わって新しい村人が登場する度にその不気味さと共に生理的な不快感が増幅していき、だんだんと見たくないものを無理矢理に視界に入れてくるような展開が絶妙。(ただし、無粋な邦題により本来ならジワジワ来るはずのなんとも言えない違和感の正体が最初からネタバレされているため、いちいち怖いというよりキタコレ感で笑ってしまうのはいかがなものか・・)

深読みしようと思えばいくらでもできそうだが、全面的にここ数年やたらと取り上げられているトキシック・マスキュリニティへの嫌悪感をこれでもかと煽ってくる作りなので、そういう視点で観てしまえば割と分かりやすい作品だと思った。

終盤のキモさクライマックスの最中に、ヒロインが最早恐怖に慄くよりも「は?またかよ・・」と心底うんざりしていく様子をちゃんと見せているところが素晴らしい。(信頼しているレビュアー様の多くがちゃんとここに気づいていらして、嬉しくなったので評価上げました。皆様さすが!)
そりゃそうだよな。挙句の果てに言うことがそれかよ!と。千と千尋の坊と変わらないじゃん。あの子のほうが作中でよっぽど成長してたぞ。見習え!

なお、男性との関係において何らかのトラウマがある人や、妊婦及びトコフォビアの傾向がある人にとってはかなりキツイ描写があるので要注意。