えいがうるふ

ブレット・トレインのえいがうるふのレビュー・感想・評価

ブレット・トレイン(2022年製作の映画)
1.5
どこらへんから面白くなるのこれ・・・と思いながら辛抱強く観ていたが、結局ものすごくお金のかかった超駄作という印象しか残らなかった。
洋画におけるトンチキな日本描写は散々観てきたが、未だにこんなもんなのかと心底ガックリした。”COOL JAPAN”というあの目にする度に無性に気恥ずかしくなる単語を思わせる、イキって作ってる割にひたすら浅くて頭悪い感じがとにかくダサい!
わざわざキャラ名をTangerineにしたのに、最後のトラックに積まれてたそれ、蜜柑じゃなくてオレンジだし。とことん雑。

何より興ざめだったのは脚本の雑さとリズム感の無さ。無駄にテンポは速いがシーンが変わるごとにブツブツ途切れてグダる。スゴイ下手くそなDJが回してるルックだけはド派手なパーティみたい・・

タランティーノ、それも恐らくキル・ビルが大好きなんでしょうが、オマージュどころかパロディにしても残念すぎる出来。
その余りにも浅くて雑な寄せっぷりについ無意識に比較しながら観てしまったが、予算の潤沢さだけはひしひしと伝わるだけに話が進むほどになんとも言えない気分に・・・。しまいには、これはタランティーノかぶれの超金持ちのボンボンが金にあかせて道楽で作った学生映画だと思うことにした。(いや、そんな言い方は未来ある学生の皆さんにたいへん失礼だな。いい大人がこんなものをドヤ顔で作っちゃうことがむしろ親世代としては恥ずかしい・・)

むしろ、一見ダラダラと駄弁ってるだけに見える会話劇もちゃんとその演出ならではの面白さをきっちり追求し、各キャラクターの個々の魅力を観る者に伝える上で欠かせないシーンに仕立てているタランティーノの隙のない仕事ぶりと才能を改めて思い知った。弛緩しきった空気のアイドリングでこちらを油断させておいて一気にエグいアクションへとなだれ込む、あの胸のすくような緩急の切れ味よ・・・!
しかし、次の展開の枕として計算づくで仕込まれた「間」は、それを形だけなぞっても文字通りただの間延びしたシーンにしかならないことがよく分かる。いくら予算をかけようとやはり土台となる作品の世界観の作り込みと脚本が雑だとどうにもならない。原作者の伊坂幸太郎の本音はいかばかりか。
真田広之が締めてくれるかと一縷の望みをかけてたけど、やはりキャラクター描写がなんとも微妙で残念。終盤のアクションシーンでやや(鑑賞者の)HP回復。

もちろん、ブラピだ真田広之だ新幹線だ伊坂幸太郎ハリウッド進出などなど話題性だけである程度の集客は見込めるだろうし、もしかしたら今の映画ファンのマジョリティは話題性とインスタ映えのような表層の価値だけを求めている可能性も否めず、そういう意味では時代のニーズに即した作品なのかもしれない。なんとも虚しく貧しい話だが・・
そんなこんなでこれから映画制作を目指す若い人にとっては色んな意味で教材としてはなかなか良いコンテンツだと思う。二時間超を費やしたのが悔しいのでこの結論にしておく。

登場人物中、レモンとみかんのキャラクターだけは良かった。彼ら二人の出会いからこれまでの紆余曲折を描いたスピンオフ希望!