えいがうるふ

マグノリアのえいがうるふのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
3.9
今更ですが初めてちゃんと観た。
映像としては凄まじい推進力のまま突き進み3時間超があっという間。
次から次へとギリギリな人々が登場し、その痛々しい様子を残酷なまでにクリアに晒していく。それぞれ役者の演技が巧みなだけに観ていてずっと心がヒリヒリと休まらない。ああ、もうやめてあげて・・と何度も思うくせに、一瞬たりとも目が離せない自分の中の冷酷さにも気付かされ、精神的に翻弄される感が半端ない。休み休み観たからいいようなものの、これをスクリーンで一気に観たら相当疲労するのではなかろうか。

役にハマっているという意味で特に秀逸なキャスティングに思えたのはトム・クルーズ、ジュリアン・ムーア、P.S.ホフマン。前者二人は壊れちゃった人演技が上手すぎて怖いし、残る一人はその慈愛に満ちた微笑みが揺るぎない信仰心を感じさせてうすら怖い。ぞわぞわ。

そんなこんなで映画としては最初から最後まで見ごたえがあり決して退屈はしなかったものの、話の帰結のさせ方には個人的に大いに不満がある。
現実にはありえない美しい夢をも見せてくれるのが映画だとしても、それまでの人生で好き勝手して家族や愛する人を散々傷つけてきた人間が今際の際にその罪悪感に耐えきれなくなって赦しを得ようともがく姿を、私は美しいとも潔いとも思えなくて、「は?今さら調子いいこと言ってんじゃねえよ!」とか呟いてしまう。

私がもしクリスチャンだったら多少は理解出来るのかも知れないが、キリスト教圏の洋画にありがちな自分が犯した罪を告白し懺悔することで赦されようとするのも本当に身勝手で虫がいい話だと思うのだ。
本当に悪かったと思ってるならその罪悪感ごと墓場まで持っていって一人で地獄で思う存分後悔すりゃーいい。クズは最後までクズを貫け!(そういう意味では、ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの方が100倍良かった)

ましてこの作品の場合、登場人物それぞれの一世一代の懺悔の結果の神の審判を怒涛の荒技展開でなし崩しにしちゃうんだもんなあ。
◯降って地固まる・・・わけないじゃん!!笑うしかないが、それにしても絵面がリアルすぎて後味のエグミがすごい。
PTAがこれを撮った当時まだ20代だったことを思うと、若くして成功し金と名声に恵まれたやんちゃクリエイターの「やっちまった」感がある意味微笑ましいと思わないでもない。彼にそれを可能にした「ブギーナイツ」もやはり観ておくか・・

ちなみに非常に稀な事象ながら実際にアレが降ることはあるらしく、史実として報告が残っている。
まさに神の悪戯みたいなそんな珍事のおかげで目の前の修羅場を無事切り抜けた人も実際にいるのかも知れない。と思うとちょっと面白い。