踊る猫

夢の踊る猫のレビュー・感想・評価

(1990年製作の映画)
4.4
興味深い。私はキューブリックを(なんなら近年のデヴィッド・フィンチャーも)理解出来ないほど映像に関しては鈍感な人間なので、最初の二話が「いや映像として凄いのは分かるんだけれど……」と退屈に感じられて投げ出しそうになった。それが雪山やトンネルのエピソード辺りから尻上がりに面白く感じられた。舞踏や吹雪や死体の行列……といった細かいところに監督の映像面でのセンスを感じさせられたことに加えて、この映画が撮られた当時から戦争や原発問題や弱肉強食の風潮やエコロジー/スローライフ、あるいは美術とはなにかといった問題から死生観までを、夢という荒唐無稽な設定を用いながらも「ストレートに」(ここが重要!)扱われている先見の明に度肝を抜かれる。決して映像が凄いだけのハッタリの映画ではない。人に依ってはそういうところをむしろ「説教臭」として受けつけないのかもしれないが……そのあたりなかなか悩ましいところ。客観的な評価は(いつもながら)出来ない。何気にいかりや長介の演技が見事。
踊る猫

踊る猫