踊る猫

欲望の翼の踊る猫のレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
3.6
女と車と拳銃、というのはジャン=リュック・ゴダールの映画になくてはならない3つのエッセンスとなる(誰が言い出したかわからないが、なかなかの慧眼だ)。ではウォン・カーウァイの映画の必要不可欠なエッセンスは何だろうか。それは多分に「女性」「夜」「独り言」ではないかとも思う。特にこの作品では、相手を前にして台詞を語る図式にこそなっているけれど実質的には自分に向けて言い聞かせるように人々が「ひとり語り」を行う。その内容は時に高度な思弁を孕んでおり、その思弁がこちらの生活の本質を貫いて響くのでこちらの思い出の中に留まり続ける。『恋する惑星』でも『花様年華』といった映画しか観られていないトーシロなので無知ゆえの思い込みもあるだろうが、ウォン・カーウァイの映画からリアリティが感じられるのは(あるいは、フェイクではあるけれどそれが一概に「嘘だ」と切り捨てられないのは)そうした思弁が持つ鋭さであり、「確実にキャラクターが呼吸をしている」と思わせるリアルさからではないか?
踊る猫

踊る猫