踊る猫

ジョン・レノン,ニューヨークの踊る猫のレビュー・感想・評価

3.9
リバプール出身の泣く子も黙る不良少年だったジョン・レノンは、その後ビートルズの一員として大成しそこからヨーコ・オノと結婚、そしてハウスハズバンドになったかと思えばプロテスト・ソングを朗々と歌う活動家になり……と「転石苔を生ぜず」を地で行く活躍(?)ぶりで周囲を常に瞠目させてきたポップスターだった。この映画はそうしたポップスターの真実を語るものか、と言えばそこは厳しいものがあると思う。むしろこのドキュメンタリーはニューヨークに渡ってからのジョンの生活を周囲のスタッフ(むろんヨーコも含む)の証言から照らし出した、ジョンの「日記」でも読んでいるかのような地に足の着いた出来と思った。酔いどれロッカーであり、つまりはダメ人間ぶりを見せつけるジョンが同時に鋭い切れ味を誇るミュージシャンであったことを示すなど、この映画を観ていると本当にジョンはわからない。わからないのだけど、しかし今の世の中のように彼を「楽聖」のポジションに置く風潮には違和感を抱く。このドキュメンタリーもまた、そんな彼の「功罪」をしっかり照らし出していて好印象を持つ。
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