踊る猫

DUNE/デューン 砂の惑星の踊る猫のレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
4.1
実に重厚で渋い映画だ。冒頭の「ツカミ」でこちらを持っていき、15分で設定を説明する類の映画とは違う。訳が分からなくても次第にその映像美や演出の中に呑み込まれていく。そして気がついたらストーリーの最中で堪能させられている……そんなヴィルヌーヴ印が効いた映画だ。そして、その「じわじわ」深みにはめ込んでいく映画はいろいろ深読みを誘う。この映画の砂漠の戦士たちの佇まいは私がニュースでお馴染みの中東の民たちのそれにクリソツなのだけれど、このイメージのカブり方に「オリエンタリズム」という古い言葉を持ち出すのも一興だろう(私はこの立場を採らないが)。そして、この映画が指し示す群雄割拠の時代の描写と私たちが生きる時代のパワーポリティクスをオーバーラップさせるのも面白いのではないか。もちろん、エンターテイメント映画として現実を忘れて堪能することも一興ではあるのだけれど『灼熱の魂』を撮った監督ゆえにこの「カブり」方は彼の良心的メッセージが込められているのではないか、と妄想が逞しくなってしまうのだった。 
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