踊る猫

スイマーズ:希望を託しての踊る猫のレビュー・感想・評価

スイマーズ:希望を託して(2022年製作の映画)
4.8
「映画に政治を持ち込むな」と、この映画を観た人の何人かはつぶやくことになるのだろうか。だが、これが「リアル」なストーリーなのだと言われれば唸らざるをえない(実際に実話をベースにした映画のようだ)。観ていて良質なロールプレイング・ゲームを連想した。出来事がまんべんなく配置されて、それが串刺しのようにひとつに連ねられて映画のグルーヴを生む。だからダレることはなく魅せる(もっとも、「ダレ場」がないことの苦痛さというのもありうるが)。そしてそのロールプレイング・ゲームのような性格に見合ってこの作品は2人の水泳選手の姉妹が苦難にぶつかり、それを乗り越える様子を豊富なディテールと共に描き切っており、なかなかの力作と思い舌を巻いた。だがそのリアルさの過剰さ、あるいは苦難の描写の細かさにバランスが傾きすぎて水泳のシーンがやや少なめであるのが気になる。「夢を信じる」という肝腎のメッセージの強度を削ぎ落とす結果になっていないだろうか?
踊る猫

踊る猫