踊る猫

Racionais MC's:サンパウロのストリートからの踊る猫のレビュー・感想・評価

4.6
最初は物足りなく感じた。というか「わかりにくいな」と呟いてしまった。というのはブラジルの国内事情を知らないと見えにくくなる部分もあると思ったからである。注釈的なものが必要ではないかと思われた(事前に同じネトフリでブラジルの政治に手堅くアプローチした『ブラジル―消えゆく民主主義―』を観てから臨むのがいいかもしれない)。しかし中盤から尻上がりに面白く感じられて、最後まで鑑賞して感服することができたのはやはりこの映画でハショナイスの面々の「成長」が確実に、迫力を伴ったものとして記されているからだろう。悪徳警官や政府といった悪(「巨悪」と書くべきか)との戦いから、そんなヒップホップを奏で続ける「自分自身」を見つめ直し対話を重ねる態度へと彼らはシフトしていく。だが、彼らは丸くなったりはしない。今なお「ストリート」と共に生き、そこから見えるもの/そこからしか見えないものを届けんと第一線で動き続けている。その態度にはブレがなく、それゆえに並ならぬ説得力を感じさせられた。彼らのファンになってしまった。
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