ふしみあい

雪之丞変化のふしみあいのレビュー・感想・評価

雪之丞変化(1963年製作の映画)
4.8
フイルムの荒い感じと今のデジタル表現ではできない、暗さ、闇の表現がものすごい作品。街灯が無い時代、日が沈んでしまえば月明かりしかない暗黒の世界。
頭ではわかっていても、光に慣れている私たちには到底想像がつかない。それがこの映画ではうまく再現されていて、いままで見た明かりが無い時代の描写で1番しっくりきた。

まるで舞台を観ているかのような照明の使い方。
セットや江戸時代の街並みなど、それほど大規模に再現していないのかもしれない。しかし、江戸のお屋敷の塀を写すだけで、そこが現代でないことはわかる。
当たり前のことだが、その”見せないこと”の塩梅がものすごい。

雪之丞を取り囲むキャラクターも個性的で面白く、明るくない画面の中で雪之丞の白粉の白さ、女たちの肌の滑らかさが際立った。

暗闇の中手繰り寄せて行く糸の表現や、キャラクターにだけ照明を当てて2人の関係性を浮き彫りにさせる手法など、CGではできない、作り手の工夫やアイデア、画作りがほんとに凝っていてセンスに溢れていた。市川作品初めて観たけど、この一本だけで巨匠と呼ばれるのも頷ける。他の作品も見てみようと思う。