ふしみあい

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)のふしみあいのレビュー・感想・評価

5.0
うまい!文句なしにめちゃくちゃ面白い一作。完璧な最終章。そして旧作1への完璧な橋渡し。

前作2作を観ていない人へ向けてざっと世界観がテロップで出るところから始まる今作、20世紀フォックスのいつものファンファーレが猿惑仕様!打楽器で構成された音楽で、森の中や原始的な中にある知能的なイメージが湧き起こされる。この時点でもう音楽絶対良いと確信した。

そして超かっこいいタイトルコール。今回は人間視点から始まる。張り詰める空気。
全編通して緊張と緩和のバランスが絶妙に良い。手に汗握るシーンからコミカルなシーンまで本当に幾分の隙もなく面白い。

だんだんと猿っぽくなっていく顔と、人間っぽくなっていく動き。猿の惑星になっていくことを予感させる。
アンディ・サーキスのApeの動きは言わずもがなで、モーションキャプチャなのにシーザーの悲しみや決意、諦念などが目からわかる。すごいなあ。

映像的にも三部作の中で1番すごくて、冒頭の猿と人間の戦闘を超俯瞰で真上から舐めるように撮っていくショットや、馬に乗ったシーザー達が砂浜を歩くシーン、雪山の白に映える黒い猿たち、ほんとにワンシーンワンシーン絵画みたいで映像としてカッコいい。それに加えてシーザーが最高のキャラクターだからもうずっと見入ってしまう。

オープニングで予感してた音楽もやっぱり最高でちょっとレトロ思考というか、多分前作の音楽のアレンジなのか、木琴や打楽器や管楽器などがたくさん使われてて音楽だけでもめちゃくちゃ面白い。
新作観ながら旧シリーズ観たい!と強く思った。

肝心のストーリーも、伏線の張り方とか展開が、観客の興味を引くように作られている。ノバの由来、持っていたぬいぐるみの意味、大佐の行動原理、シーザーの葛藤、行動。その他のキャラもちゃんと一人一人キラリと光っており、死ぬときは悲しいし心底大好きになる。

新キャラのバッドエイプはコメディ枠というありそうでなかったキャラで、ただアホなことをするのではなくて、それがちゃんと物語に還元されているのが良かった。今回のグレートウォーになくてはならない存在。

宣伝で鍵を握る少女と言われていたノバは鍵をまあ握ってたっちゃ握ってたけどいて役立ったなあ、というキャラ。
ローガンでも成功した、おじさんと少女のバディもの。今回はおじさんもといおじ猿たちと旅をするのだが、猿たちとのささやかな交流を通して着実に絆が描かれていくのがイイ。モーリスの背中にしがみついてるのとか可愛い。

着実に猿たちへの感情移入をさせていきながら、人間側もおざなりにすることなく丁寧に描き、さらには人間側に寝返った猿たちのことも拾い、映像的にも音楽的にも最高のものだった。
シーザーと対になる大佐も、悪ではあるが悪になった理由や彼の最期など痛ましかった。色々な感情が込み上げて胸が熱くなった。

猿の惑星になる理由も、非常に納得のいくもので、猿たちだからこそ生き延びれた、というのがスッと入ってくる。

ラストシーンでは、それまでの真っ白な雪山から旧・猿の惑星の色味になっていて、新たなオアシスにたどり着いた猿たちとそれを見守る、始まりにして最強の猿・シーザーとのカットバック…ベタな演出だけどこれまでの前2作を思い出して泣けた。シーザー、あんたは最高のエイプだよ。