ふしみあい

三度目の殺人のふしみあいのネタバレレビュー・内容・結末

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

福山雅治、役所広司、二人はいうまでもなく脇を固める役者陣が皆良い。
満島真之介のまだ染まってない感じとか、斉藤由貴の気持ち悪い感じとか。

キャッチコピーに「犯人は捕まった。真実は逃げ続けた。」とあるように、犯人の証言が二転三転し、最後まで真実はわからない。
では"三度目"の殺人とは誰が、誰を殺したことを指しているのか?

色々な解釈があるが、一緒に見た人が映画が終わってからぽろっと言った解釈が1番納得したし、目から鱗だった。

役所広司演じる三隅の裁判が始まる。彼は最高裁でそれまでの供述をひっくり返し、無実を叫ぶ。ただ彼の言葉を信じ、福山雅治演じる弁護士・重盛は検事たちと戦うも、裁判長と弁護団、検事との間で交わされるアイコンタクトであっさりと死刑は決まってしまう。

広瀬すずの誰が裁く人を決めるの?という問いこそがこの映画のテーマであり、すべてであると思う。
結局、裁判長も弁護士も検事もひとりの人であり、誰かを裁くということに対して正しいことなんて誰もわからないのである。

その意味で、形式を重んじ、手間を惜しみ、ひとりの人間を死刑に決めた裁判に参加した裁く側が三隅というひとりの人を殺したのだ。

一度目は三隅の30年前の殺人。
二度目は三隅の現在の殺人。
三度目は法廷による殺人。

法廷関係者が見たら是枝さん嫌われるんじゃないの?という内容だ。
しかし人が人を裁くということ、殺めるということ、欺くということ、それらの根源的な問いが重盛はじめ広瀬すず演じる咲江らを通して描かれる。

重い内容かもしれないが、真実を求める重盛にどんどん感情移入していく。彼の観た夢の美しいこと。

刑務所での面会シーンではガラスに映った重盛と三隅が重なるという演出があるが、お互いがお互いの中に自分を見出した瞬間というのがよく表現されていた。かっこいい。黒澤明監督の天国と地獄でも同じようなシーンがあって、引用されているのかな。

観た後はずっしりと重くなるが、役者陣の確かな演技、どんな脇役でもめちゃくちゃ印象的、美しい映像、何度か出てくる十字架…もう一度見て細部までしっかり確認したらもっといろいろわかるんだろうな。