ふしみあい

天国と地獄のふしみあいのレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
5.0
パッケージにもなっている、列車の画像から、列車映画だと思っていたら全然違うかった。良い意味で裏切られた!

三船敏郎はもうどう頑張っても良い奴なんだなあ。
会社の重役会議で、現社長を追い出すための密談をする重役たちのシーンから始まる今作。少しテンポ遅いかなと思ったものの、ある出来事をキッカケに話がどんどん転がりだす。その勢いはさすが黒澤明という感じで、あれよあれよという間にスクリーンに映し出される映像、スピーカーから流れる音に惹きつけられる。

この映画は子供が誘拐されてから取り戻すまでと取り戻した後の犯人探し、2つの部分で構成されている。
前半は主に三船敏郎演じる権藤の会社に対する思いや、それに合わせて身代金を出すことへの葛藤が、後半は警察を中心とした犯人探しの面白さが描かれる。

そしてそれが決してダレることはない。60年代の日本の暮らしとか風景を楽しむのも面白いし、犯人をだんだん絞り込んで行く過程も面白い。時代や警察の感じなど、砂の器を思い出した。燃費はめちゃめちゃ悪いだろうけどこの時の方が車可愛い。衣装もとても可愛かったし、スーツ姿の男たちが汗だくになっているところとか、女の人がちゃんとスカートとかワンピースとか着物とか着てるのも良い。

みんな常に煙を吸っていて、時代を感じた。ストーリーの抑揚もすごいが、画面がいちいち計算されていて美しい。
役者が立つ位置や座る位置をちゃんと決めているのだなということがわかる。とても効果的なシーンがいくつもあった。

三船敏郎のおもむろにシャワーを浴びるシーンはシュールだったが、現代でも通用する笑いが割とたくさんあって楽しかった。エンターテインメントだなあ。