ふしみあい

ソウル・ステーション パンデミックのふしみあいのレビュー・感想・評価

4.5
新感染との繋がりや前日譚とかの繋がりを意識せず、一本のゾンビものとしてとても面白かった。

登場人物のキャラクター設定がすごい。
人間ドラマとかではよくあるような、ヒモ男と、それに依存する家出した女の子、国に尽くしたのに国から見放されたホームレス。
最後に大きなサプライズがあり、そこでこれらの登場人物の設定が活きてくる。

お互い全く知らない二人が、共通の知人を探す、というストーリーは王道だ。そしてその結末は大抵予想がつく。
しかし今作ではそういったストーリーがゾンビという皮を被り、水面下で静かに動いている。
観客はゾンビにおののき、恐怖し、ただただ身をすくめて画面を見つめるしかない。
そこでラストのサプライズ。本当に驚かされた。その辺の作り方がめちゃくちゃうまい。
アニメーションな分、迫力という点では新感染に軍配があがるが、よりダークな、観た後にイヤーな感じが残るジトジトとした感じという点では、完全にこちらが優っていた。あとゾンビの顔めっちゃ怖い…。実写だと血とか埃で隠されてる分、アニメーションではっきり描かれ、それがグルン!と首を回してスクリーンの中のゾンビと目が合う瞬間とか本当に震える。

また、終盤ある登場人物が殺される。それまでは人間vsゾンビという構図だったのが、このワンシーンで人間の、人間に対する狂気を見せつけられることになる。
ホラーとかゾンビものって、結局怖いのは人間だよね〜というテーマがビンビンに見えているものほど萎えるものはない。
しかし今回はそれまでの純粋な恐怖が、一気に別種のものへと変化する。もちろんそのままゾンビも恐怖の対象ではあるし、そこからさらに嫌な雰囲気は増して行く。

韓国というお国柄、大の大人たちがみんな大袈裟なほど声をあげて泣く描写が沢山あって面白かった。
また、新感染のパンフでも言っていたが、監督が日本のアニメに影響を受けたらしく、絵柄が今敏監督だった。