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非常宣言のdeenityのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.8
高致死率の未知なるウイルスを機内でばら撒くバイオテロ&飛行機パニックムービー。
それに加えて地上でも抗体薬を求めて奔走するパートでもしっかりアクションを楽しめる娯楽性の高い作品。
ここにソン・ガンホなりイ・ビョンホンなり実力派俳優を並べられたら、やっぱり韓国映画には敵わんなとレベルの高さを痛感します。

冒頭から坂口健太郎似の明らかにヤバめ男が映されるので、犯人探し的なミステリー要素はありません。明らかにテロを試みようとしている男をたまたま目撃してしまった子がいて、その子と同じ便に乗っていく空港パート。
そして地上ではテロ予告がネット上にあがり、その人物をあたっていくとどうやらいたずらではなさそうだとわかる地上パート。
この2つのパートが絶妙なタイミングで交錯していく作りがとにかくスマートです。

さらにこの作品を面白さをワンランク上げた要因は、不幸にもコロナ禍を経験したことが大きいはずです。
以前だったらウイルスと聞いてもそれはあくまで映画内世界の話であって、現実とは切り離して考えてしまうでしょうが、あの経験がある今の我々にとっては私事とまではいかずとも、あの各国の判断に対して共感できたり、少なくとも批判的に捉える人はいないでしょう。
何なら自国でさえああいう様を描くわけですから、反日とかそういう意図はないわけで、それだけ緊迫感ある演出として効果があったはずです。

しかし、それでいてこの映画が素晴らしいのは、パニックアクションでハラハラさせた後にしっかりめに泣かせに来るところですね。
あの決断の重みってのはやはり涙腺を刺激します。地上にいる人が身勝手だとか、機内の人たちが崇高だとか、言い切ることができないようないろんな思いが交錯して、人としての尊厳を保とうとする意志が心に響きます。

娯楽映画として文句なしに面白かったです。劇場で見てたら満点だったかも。んー、まあそこまでではないかもしれませんが笑
娯楽映画なのでいろいろ甘めなところもあります。でもそういうところを気にしなければめちゃくちゃ楽しめる作品でした。
ただ最後に一言。これだけは言いたい。彼はなぜ空港のトイレで縫ったの?家でやってこいや笑
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