カルダモン

逆転のトライアングルのカルダモンのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.6
大型クルーザーで行われるパーティに集うスーパーセレブたち。デッキの上で陽光を浴び、シャンパンを手に、思い思いの優雅なひと時を過ごす。
クルーズ船のスタッフ達はそんなセレブ達に気持ちよくなってもらうため常に平身低頭、お客様は神様だ!の精神で。さすれば高額のチップを弾んでもらえる。
船の下層部では料理人や掃除係などなどの労働者たちが、美味しい料理を、綺麗な船内を提供するために汗水を流す。

上層の富豪
中層の船員
下層の労働者

三層構造のミルフィーユにザックリとフォークを突き立てて、絡み合いぶつかり合う味と味。刺激される味覚。言葉を失う後味にしばし茫然となる。

原題『Triangle of sadness』=悲しみの三角形というのは眉間のシワのことらしい。あらすじや予告編を見て、はっきりと主従関係の転覆劇だとわかっているのに十分に楽しい。むしろわかっているから楽しい。というよりも転覆劇というのは建前に過ぎず、そこから先、どこに自分の感情の置き所があるのか、クルーザーの如く揺れに揺れている状態が楽しい。

資本主義社会はサバイバル。船の転覆と同時に主従の関係は転倒する。漂着した島でサバイバル能力が高かったのはクルーザーの下層で清掃員をやっていたアジア系の女性。さあここからが本番だと言わんばかりに、映画はますますドライブしていく。

中盤、夜の会食から始まる一連の展開。最近見た映画の中でいちばん瞬間風速が強かった。顔をしかめながら大笑いというメチャクチャな状態が最高and最低🤣😵‍💫🤢🤮加えて撮影とか照明とかめちゃくちゃ凝ってるからもうカオス。


わかりやすいアイロニーなのに味わったことがない感じ。さすがリューベン、皮肉担当の映画作家。オストルンド監督作ではもっとも人に薦めやすいかも。147分があっという間。