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CLOSE/クロースのMaUのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
3.8
花卉農家の息子レオとその親友レミ。二人は兄弟のように時を過ごし、いつも共にいた。その友情はなぜ壊されなくてはならなかったのだろうか。

起こったことの理由は誰にもわからない。正解もない。残された者は互いに寄り添い合いながら、どこかそれぞれが自分を責め、傷を抱えながら生きていくことになる。

花卉農家としての日々が自然と共にあり美しい。その中で子犬の兄弟のように無邪気に戯れるレオとレミ。思春期を迎えた二人は学校生活の中でふとしたことから無邪気ではいられなくなる。たわいもないことだ、なぜ流せなかったのか、とは言いきれない。私も級友たちと同じ視線を向けたことはなかっただろうかと自戒する。無自覚な他人の言動が思春期のレオには刺さり、自分の中のモヤモヤと融合してしまう。この苛立ちと潔癖さは時に人に対してとても残酷だ。だからといってレオが悪いわけではなかったのに。

淡々と描かれる日々の中で、悪意のある人は誰もいなかった。級友たちでさえ。唯一ジェンダー固定の象徴のように置かれているアイスホッケーの教室もそこまで極端ではない。親や教師もあらゆる点で強い思想で子供を囲い込んではいなかった。それでも、それでもやはり固定された社会の型は人を苦しめる。こうであるべきというあり方は誰が決めるのか。型から外れていたら、外れるものがより強くあらねばならないのはなにからの圧力なのだろう。いや、そもそも外れていたのだろうか。

乗り越えようとしながら悲しみに包まれる夜、レオは兄のベッドに潜り込む。このシーンが私には印象的だ。少し年の離れた兄に救いを求め並んでただ眠る。この行動に違和感はない。それまでのレオの葛藤やそれゆえに遠ざけたこととの落差を思い、とても切なくなった。

二人の少年がとても瑞々しい。レオはこの出来事を通して顔つきがどんどん鋭く大人びていく様が描かれている。レミは大人しいが愛らしくどこか儚げな雰囲気がとてもよかった。映像は自然が美しく、土や花や雨がとても印象的。こんな自然に抱かれた暮らしの中にも窮屈な社会の型やその視線はあるのだと思わされる。

予想しているような話ではないかもしれない。だからこそとても考えさせられる。この息苦しさを解放する術はないのかな。

追記:配給A24、なのだ。結局私は好みがそこなんだろうか…
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