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ノック 終末の訪問者のkuuのレビュー・感想・評価

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
3.7
『ノック 終末の訪問者』
原題 Knock at the Cabin
映倫区分 G
製作年 2023年。上映時間 100分。
2018年のポール・トレンブレイによる小説『THE CABIN AT THE END OF THE WORLD』が原作のスリラー。
山小屋で休暇を楽しんでいた一家が、家族の犠牲か世界の終えんかの選択を突きつけられる。
監督などを務めるのは『シックス・センス』などのM・ナイト・シャマラン。
『アーミー・オブ・ザ・デッド』などのデイヴ・バウティスタのほか、ジョナサン・グロフ、ベン・オルドリッジ、ニキ・アムカ=バード、ルパート・グリントらがキャストに名を連ねる。
 
幼い女の子と両親は、人里離れた森の中にある山小屋に休日を過ごすためにやって来る。
そこへ武器を手にした見知らぬ男女4人が突然現れ、ドアや窓を破って侵入。
謎の人物たちに捕らえられた家族は、自分たちの選択次第で世界は滅びると告げられ、家族の犠牲か世界の終わりかという究極の選択を迫られる。。。

M・ナイト・シャマランの反応は両極端かなぁ。
彼の映画は、その奇抜でありながら野心的な特徴的スタイルによって、人々に愛されるか嫌われるかのどちらかかと。
少し云いすぎかもしれないが。
彼の振り切る姿勢は、『シックス・センス』の大ヒット以来個人的には敬慕の念を抱かずにはいられない。
途中、完全振り切りの三振もあったけど、ここ10年で彼は映画のルネッサンスを築いたって云いきれるかな。

偖、今作品の邦題『ノック 終末の訪問者』ではちょい分かりにくいが、原題の"Knock at the Cabin"にある通り当然のことながら、この映画の舞台は人里離れた山小屋での話。
しかし、森の中の小屋に住む無防備な家族に家宅侵入するというホラー映画の古典的な型にひねりが加えられている。
今作品は、大学生位からかな?が考えはじめる倫理の具体的な問題、すなわち『トロッコ問題』を取り上げている。
冒頭、ウェン(クリステン・キュイ)とレナード(デイヴ・バウティスタ)が登場する。
7歳のウェンが小屋の前でコオロギを捕まえていると、レナードが近づいてくる。
レナードの声の温かなトーンとは裏腹に、何かがひどく間違っていることはすぐにわかるし、音楽、カメラアングル、気の遠くなるような近接ショットがそれを明白にしている。
その直後、ウェンは他にも数人の人影が到着するのを目撃し、ついに他人危険レーダーが作動する。
彼女は小屋に駆け込み、父親であるエリック(ジョナサン・グロフ)とアンドリュー(ベン・オルドリッジ)を見つける。
ウェンは両親に何か問題があると説得するのに苦労するが、小屋のドアをノックする音を聞くと、両親はもう自信がない。
侵入を拒否された見知らぬ男たちは、強引に小屋に侵入し、ウェンの瓶に閉じ込められたコオロギと同じように、一家を小屋の中に閉じ込めてしまう。
侵略者たちは、アンドリュー、エリック、ウェンに不可能な課題を突きつける。
家族の誰かを進んで犠牲にしなければ、黙示録が始まり、全人類が死んでしまうというのだ。
その要求は馬鹿げており、エリックとアンドリューは捕虜たちが真実を語っているとは信じようとしない。
しかし、疑問は残る。誰の命をより大切にするのか?
自分の家族か、それとも地球上の78億人の人類か?
この種の問題は、『トロッコ問題』ちゅう哲学的な問いに示されている。
ハーバード大学のマイケル・サンデル教授が『ハーバード白熱教室』での中でよくこの問題を議題にしてるかな。
話がそれましたが、今作品を通して、登場人物たちはこの倫理的問題と格闘しながら、この問いの答えをいくつかの異なるバージョンで演じ分ける。
当初、一家は多勢よりも少数を守ることを主張し、残りの人類を救うために自分たちの誰かを犠牲にすることをいとわないように見えた。
しかし映画が進み、彼らの立場が揺らぎ始めると、その選択がそれほど単純でないことは明らか。
今作品は個人的に予想を上回りよくできている。しかし、問題がないわけではない。
過剰にドラマチックな音楽と怪しげな登場人物のバックストーリーによって、ホラー映画の感情操作の決まり文句に陥っている。
さらに、今作品は面白いアイデアを提案しているようで、それを実行に移すことができない。
例えば、エリック、アンドリュー、ウェンの3人は、この不可能な任務を与えられた最初の家族ではないことが示唆されている。
この言及の背景にある歴史については、それ以上語られていない。
にもかかわらずやけど、今作品の登場人物、プロット、メッセージはユニークで面白い。
フィクションの黙示録的スリラーというテーマと、アンドリューとエリックのフラッシュバックで描かれる現実的な差別問題が混ざり合い、ホラー映画としては面白い組み合わせになっていました。
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