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あの夏のルカのkuuのレビュー・感想・評価

あの夏のルカ(2021年製作の映画)
3.3
『あの夏のルカ』
原題 Luca  映倫区分 G
製作年 2021年。上映時間 96分。
劇場公開日 2024年3月29日。
その他の公開日:2021年6月18日(日本初公開)
ディズニー&ピクサーによる長編アニメーション。
北イタリアの美しい港町ポルトロッソを舞台に、海に暮らす『シー・モンスター』と呼ばれる種族の少年ルカが、あこがれの人間の世界に足を踏み入れる、ひと夏の冒険を描いたファンタジーアドベンチャー。
監督はピクサーの短編『月と少年』を手がけ、長編はこれが初監督となるイタリア出身のエンリコ・カサローザ。
Disney+で2021年6月18日から配信。
2022年・第94回アカデミー長編アニメーション賞ノミネート。
2024年、コロナ禍で劇場公開が見送られた他のピクサー作品とともに劇場公開が実現。

北イタリアの港町ポルトロッソの住民たちは、海に住む未知の存在『シー・モンスター』を恐れていた。
しかし、実はシー・モンスターたちもまた、地上に暮らす得体の知れない存在である人間たちを恐れている。
それぞれの世界は海面で隔てられ、お互いを恐れ、決して交わることはなかった。
しかし、地上への好奇心が抑えられないシー・モンスターの少年ルカは、ある夏、親友アルベルトとともに禁断の地である人間の世界へ冒険に出る。

今作品はジェイコブ・トレンブレイ(『ルーム』(2015年)でジャック・ニューサムを演じた)とジャック・ディラン・グレイザー(『IT/イット』シリーズ)が声の出演をしたこの作品は、シンプルで甘美な物語やったけど、ピクサーの歴代最高傑作の域には達していないかな。
ピクサー映画には、あらゆる年齢層が共感できるテーマを巧みに扱う傾向がある。
例えば、オリジナルの『トイ・ストーリー』は、より良い人に取って代わられることの必然性に焦点を当ててたし、『インサイド・ヘッド』は、より良い人間になるために悪い思い出を良い思い出と一緒に持ち帰ることを扱ってた。
今作品のテーマは、『人と違っていてもいいんだ』ちゅう当たり前のこと。
まぁ、『友情』ってのが全面にでてるが、今作品のメッセージとなっている『人と違っていてもいいんだ』に対しての"受け入れる気持ち"、他人に対してするのと同じ様に、自分自身を受け入れることは、とくにこの時代において価値ある重要なメッセージやとは思うが。
ルカが陸に降り立った瞬間から、この物語のどこかの時点で、海の怪物は恐れるに足らず、他人が誰であろうと受け入れるべきだということを、ルカが人間を説得する場面が出てくることは明らか。
このテーマには何の問題もないんやけど、ここでの宣伝の仕方はあまりに軽く、繊細さに欠ける。
これは、『ソウルフル・ワールド』や『リメンバー・ミー』みたいな、より哲学的な語り口で描かれた過去のピクサー作品から大きく格下げされたように感じられた。
あくまでも個人的な無知な言葉やけど、しかし、今作品が駄作だと思っているわけではないし、それ以外は実際とても良い作品なんやけど、ただ、近年のピクサーの方がずっと賢く、ウィットに富んでいるのに慣れてしまっているので、それに比べると今作品がとても残念に思えてしまう。
ピクサーを決して非難できないことのひとつは、彼らのアニメーションの質は巧み。
イタリアの小さな港町ポルトロッソの生き生きとした情景に、パスタを食べ、石畳の道を歩き、ベスパに乗る住民たちの生き生きとした姿と、海岸線に静かに打ち寄せる海の姿に見えた。
その後、これはルカとアルベルトの色とりどりの海の怪物の姿と重ね合わされ、彼らがしばしば陥った文字通りの "海の藻屑 "の状況を強調している。
ここで採用されたアニメーション技法は、画期的なものというよりは、むしろ彼らの原点に謙虚に立ち返ったように感じられ、20年以上前の初期の作品を思い起こさせた。
また、もうひとつ思い浮かんだんは、スタジオジブリの映画『崖の上のポニョ』で、海辺を舞台に、陸に出たがる水生生物が登場する。
本作の監督エンリコ・カサローザは、『ルカ』はスタジオジブリの監督である宮崎駿の作品にオマージュを捧げるつもりだと明言している。
東洋と西洋の影響が組み合わさったこの作品を楽しむことはできたが、それに見合うだけのストーリーがあればと思う。
まぁルカ役のジェイコブ・トレンブレイとアルベルト役のジャック・ディラン・グレイザーのやりとりが良かった。
ふたりは、慣れないまったく違う環境に慣れようとする親友のペアとして、巧みな演技をしていたし、新人のエマ・バーマンも、二人と親しくなり、故郷の生活について教える地元の少女ジュリアを好演した。
これらすべてが、ピクサー映画でよく見られるもうひとつのテーマ、先にも書いた友情の大切さを表現している。
しかし、この映画の主な敵役であるポルトロッソの不良エルコレ・ヴィスコンティにはがっかりさせられた。
エルコレは、ルカ、アルベルト、ジュリアの人生を地獄に陥れようとする一面的ないじめっ子にすぎない。
彼の物語における唯一の目的は、必要なときにいつでも3人の邪魔をすることであり、物語全体にほとんど貢献しなかった。
しかし、多々あるCGIアニメ映画と同じくらい楽めた。
今作品が絶対的な面白さの最も妨げは、快適なゾーンから一歩も出ようとせず、テーマ的要素で異なることに挑戦しようとしないことだと思う。
だからといって見る価値がないとは思わないが、その可能性をもっと活かしてほしかったかな。
これはピクサーのもうひとつの傑作になり得たかもしれないが、その代わりに、これはこれかな。。。お茶を濁しとこ。。。
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