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パスト ライブス/再会のkuuのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.9
『パスト ライブス/再会』
原題 Past Lives 映倫区分 G
製作年 2023年。上映時間 106分。
劇場公開日 2024年4月5日。
海外移住のため離れ離れになった幼なじみの2人が、24年の時を経てニューヨークで再会する7日間を描いた、アメリカ・韓国合作の大人のラブストーリー。
これが長編映画監督デビュー作となるセリーヌ・ソンが、12歳のときに家族とともに海外へ移住した自身の体験をもとにオリジナル脚本を執筆し、メガホンをとった。
ノラ役はNetflixのドラマシリーズ『ロシアン・ドール 謎のタイムループ』や声優として参加した『スパイダーマン スパイダーバース』などで知られるグレタ・リー。
ヘソン役は『LETO レト』『めまい 窓越しの想い』のユ・テオ。
2023年・第73回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門出品。
第96回アカデミー賞では作品賞、脚本賞にノミネートされた。
アジア人女性監督の映画としては、 『ノマドランド』(2020)に次いでアカデミー賞作品賞にノミネートされる2作目となる。

韓国・ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソンは、互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。
12年後、24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいた2人は、オンラインで再会を果たすが、互いを思い合っていながらも再びすれ違ってしまう。
そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。
ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れ、2人はやっとめぐり合うのだが……。

今作品は、美しいストーリーと映像で観る者に思い出を残す傑作ドラマのひとつと云える。
このドラマに対する個人的な期待は、賞のノミネートや受賞によってかなり大きかったが、失望はしなかったかな。
セリーヌ・ソンは、長編監督デビュー作でありながら、映画と呼ぶにふさわしい、巧みなドラマを脚本・監督した。
彼女の仕事とシャビアー・カークナー(撮影監督)との協力は良く、一緒になって本当に魅惑的なショットをもたらしている。 プロットは半自伝的で、ソンの人生で実際に起こった出来事にインスパイアされているそうだ。
登場人物たちがリアルに感じられ、
彼らの人生がリアルに感じられ、
そして、映画もリアルに感じられた。
脚本も演出も巧みで、セリーヌ・ソンは『パスト・ライヴス』で秀作を作り上げた。
深い絆で結ばれた幼なじみのノラとヘソンは、ノラの家族が韓国から移住してきたことで引き裂かれる。
それから20年後、彼らは運命的な1週間に再会し、愛と運命という概念と向き合うことになる。
10分あたりで、子供たち(ナヨン、後のノラ・ムーンとヘソン)が別々の道を歩いているシーンがある。 
ノラが明るい未来に向かって歩いているように撮影され、上を向いて歩いているのに対し、ヘソンはまっすぐ歩いてから下を向いている。
このシーンは、二人がこれから歩む人生の道を象徴しており、今作品のストーリーとプロットを作り上げている。  
急ピッチで物語を展開させるのは稚拙になりかねないが、セリーヌ・ソンはそれを完璧にこなし、稚拙さを感じさせずにキャラとプロットを素早く確立していた。
そして12年の月日が流れ、映画は本当の意味で始まる。
セリーヌ・ソンは美学とミス・エン・シーン(おおまかに『作品の筋、登場人物を作り出すこと』を表す語、演出)に重点を置き、各ショットを完璧に撮影し、視覚的なストーリー性を高める見事なセットアップを施していた。
例えばスカイプ通話のように、ノラがヘソンに話す前に何を勉強しているのか、何に興味があるのかを理解できるのは、視覚的なストーリーテリングと小道具の配置、そして全体的なプロダクション・デザインのおかげかな。
また、ノラ・ムーン役のグレタ・リーとヘソン役のユ・テオの演技が巧みやった。
しかし、それだけではなく、脚本、感情的な深みとリアリズムのおかげで、物語が始まって数分も経たないうちに、物語にのめり込んでしまう。 
映画評論家のオッサンが、今作品をフランスのロマンチック映画と比較し、主要テーマの表現が控えめであることを褒め称えた。
また、この映画の控えめさ、つまり親密さ、人間的なスケール、地味な場所、視覚的な迫力のなさは、この映画の長所のひとつやとも述べてたかな。
登場人物たちが住んでいるのは、心地よくも平凡な家であり、そこでくつろぐことを想像でき、くつろぎたくなるような家やった。
今作品は、映画監督のクリストファー・ノーランもこの映画を賞賛し、お気に入りのひとつに挙げていた。
個人的には今作品は記憶に残り、将来また観たいと思える映画でした。  
創造的にも映画的にも、その年の多くの映画とは別の次元にあったし、ロマンティック・ドラマで満たされました。
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