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オーメン:ザ・ファーストのkuuのレビュー・感想・評価

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
3.8
『オーメン:ザ・ファースト』
原題 The First Omen 映倫区分 PG12
製作年 2024年。上映時間 118分。
『悪魔の子』ダミアンに翻弄される人々の恐怖を描き世界的ヒットを記録した1976年公開の名作ホラー『オーメン』の前日譚で、ダミアン誕生にまつわる秘密を明かしたホラー映画。
テレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のネル・タイガー・フリーが主人公マーガレットを演じ、ビル・ナイ、ソニア・ブラガ、ラルフ・アイネソンが共演。
本作が長編デビュー作となるアルカシャ・スティーブンソン監督がメガホンをとった。

アメリカ人のマーガレットは新たな人生を歩むべくイタリア・ローマの教会で奉仕生活を始めるが、不可解な連続死に巻き込まれてしまう。
やがて彼女は、恐怖で人々を支配するため悪の化身を生み出そうとする教会の恐ろしい陰謀を知る。
全てを明らかにしようとするマーガレットだったが、さらなる戦慄の真実が彼女を待ち受けていた。

6月6日午前6時に誕生し、頭に666のアザをもつ“悪魔の子”ダミアン。
劇中に登場する『666』は、新約聖書のヨハネの黙示録において“獣の数字”とされ、映画をきっかけに、観た人々の脳裏に深く刻まれる数字となったと思います。
また、“omen”って単語は『前兆』のことやけど、単語の響きが妙に怖いのはこれも、今作品の影響が多大にあるやろなぁと。
オリジナルの『オーメン』(1976年)はカルト的な名作であるにもかかわらず、このシリーズは『エクソシスト』や『死霊のはらわた』、さらには『ハロウィン』のような同種の作品と肩を並べるには至ってない。
また、ほとんどのホラー・シリーズは続編やリブート作品にほとんど恵まれていないが、『死霊のはらわた』だけは例外かな(『死霊のはらわた ライジング』はまぁ面白かった)。
しかし、他のシリーズもんにおける圧倒的なリスポーン作品(何らかの理由で消滅した後、再び世界に出現すること)の多くとは異なり、オーメン・シリーズの最新作『オーメン:ザ・ファースト』は、オリジナル以来出来なんちゃうかなぁと個人的には思いました。 
70年代から80年代にかけての多くのホラー作品は、通常、小規模で抑えた表現に頼っていた。
悪魔祓いが必要な子供や、家とその新しい住人に取り憑く幽霊、森の中の山小屋で10代の若者たちを切り裂く、逃亡中の恐ろしい殺人鬼が登場するのが普通やった。
初代『オーメン』は、反キリストであり悪魔の息子であるダミアン・ソーンを主人公とし、大人になると大統領になるほどの影響力を持つ人物になろうとした。
最初の『オーメン』やと、この子供の邪悪な出自と、その手続きに賛成する勢力と反対する勢力について学んだ。
さて、1971年を舞台にしたスピンオフの今作品では、公民権運動のさなかにローマに降り立ったアメリカ人修練生マーガレット・ダイノ(ネル・タイガー・フリー)が登場する。
彼女はローレンス枢機卿(ビル・ナイ)に歓迎され、新しい世代がいかに権威を拒否し、教会を含む制度の概念への信頼を失っているかを説明する。
マーガレットをさらに悩ませたのは、彼女が長年にわたって見てきた恐ろしい幻影。
彼女は、マーガレットが誓願を立てるヴィザルデリ孤児院の年長の子供たちの一人、カルリータ(ニコール・ソラーチェ)に自分自身を重ね合わせる。  
マーガレットは、ブレナン神父に会ったときに答えが見つかる一連の奇妙な出来事を目撃し、孤児院の人々の中に隠された秘密を探るうちに、自分自身について多くのことを発見することになる。
今作品が他のホラー・シリーズの前日譚と一線を画しているのは、シリーズの伝承を紹介するだけでなく、独立した映画として機能している点は特筆に値する。
『オーメン』はソーン一家が新生児を養子に迎えるところから始まるので、ダミアンの誕生で映画が終わることはすでに知っているが、監督のアルカシャ・スティーヴンソンは、出産という概念をきちんと感じさせている。
スティーヴンソンは自分の任務を理解しているのか、神話や宗教に深入りすることもなく、説明過多でもない。
新時代のグロテスクさを完璧に取り入れ、老朽化したシリーズから最高の殺しのいくつかに脱帽させ、恐怖の数々が私たちの前に現れる。
オリジナル『オーメン』の 有名な"It's all for you "と突然叫び、派手な公開自殺を遂げるシーンがある。
今作品でも、同じように自ら命を絶つ人物が登場する。
また、1976年の映画で運命をたどったブレナン神父は、今作品でも同じような最期を遂げる。 カーテンの向こうの怪物や、導線にされる前に黒いベールに包まれる女性たち、壁に飾られたおどろおどろしい美術品のショットなどなど、ホラー映画好きをワクワクさせる要素が満載でした。
巧みなプロットと見事なネル・タイガー・フリーのおかげで、今作品は伝説的でありながらボロボロの『オーメン』シリーズに命を吹き込んだ一作と個人的には思いました。
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