Omizu

ナワリヌイのOmizuのレビュー・感想・評価

ナワリヌイ(2022年製作の映画)
3.7
【第95回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー映画賞受賞】
『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』のダニエル・ロアー監督作。音楽ドキュメンタリーだった前作とは180度異なり、今作はスリリングな政治ドキュメンタリー。サンダンス映画祭で観客賞を受賞し英国アカデミー賞を受賞、最も重要とされるPGA(製作者組合賞)でも受賞。現在長編ドキュメンタリー映画賞最有力と言われている作品。

時代に乗っただけのライトな作品かと思っていたらなかなか衝撃的な見せ場も用意されたしっかりとしたドキュメンタリーだった。

大学でロシア文化の授業を受けていたときにナワリヌイという名前は聞いていた。しかし具体的に彼が何をやってきたのかは分かっていなかった。

彼の政治的態度を本人のインタビューで振り返りつつ、毒殺事件の真相を追っていくサスペンスフルな展開が単純におもしろい。

毒殺チームと断定するくだりはその非合法な手段も含め疑っていたが、好評直前の電話シーンがスゴかった。ナワリヌイだと気づかずに全て話してしまった化学者、政府によるテロが行われたという決定的な証拠になってしまった。

その後彼を逃そうと動いているのがよかった。でも終わりのテロップでは結局彼は消息不明…たぶん殺されているのだろう。相手には可哀想だが痛快な場面だった。

現在進行形で行われているウクライナ侵攻も含めてプーチン周りの闇深さというのがイヤというほど分かってしまった。

もちろんロシア側の主張は入っていないつくりなのだがテーマ上仕方ない。ドキュメンタリー映画をそのまま信じるのは禁物なのだが、ウクライナ侵攻が目の前にある今、その闇は確実にあることは間違いないだろう。

オーソドックスなドキュメンタリーながら今年のドキュメンタリーとして申し分ない作品だと思う。
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